180分の持ち時間で英・数・理3科目すべての問題を同時に配布…東大理III・京大医に次ぐ全国3位、偏差値70超え「最強公立医大」の一風変わった「推薦入試」の学科試験

180分の持ち時間で英・数・理3科目すべての問題を同時に配布…東大理III・京大医に次ぐ全国3位、偏差値70超え「最強公立医大」の一風変わった「推薦入試」の学科試験
(※写真はイメージです/PIXTA)

国公立大学医学部の入試において、募集定員の規模は偏差値の信頼性を左右する重要な要素です。少人数の枠で高偏差値を維持するのではなく、一定以上の定員を確保したうえで、いかに優秀な層を集めるか。この戦略的な枠組みの再構築は、単なる難易度の向上にとどまらず、大学の格を全国区へと押し上げるトリガーとなります。本記事では、奈良県立医科大学理事長・学長の細井裕司氏の著書『挑戦する人か、文句を言う人か』(日経BP)より、同大学の大胆な入試改革戦略をみていきましょう。

全国トップクラスへの躍進

奈良医大では2013年度入試から、従来の枠組みを大きく転換し、後期日程に募集定員の多くを振り分ける戦略を開始した。直近の2024年度入試の本学医学部医学科の募集定員は、推薦入試37人(地域枠22人・緊急医師確保枠15人)、一般入試前期日程22人、一般入試後期日程53人で、後期日程に重点的に募集定員を配分している。

 

全国の医学部において後期日程の募集定員はごく少数で、多くの大学が前期日程一本で実施していた。その中で奈良医大があえて後期日程を主軸に据えたことは、当時としては大胆な挑戦だったと思う。

 

入試改革後、奈良医大の後期日程入試には、全国から優秀な受験生が集まるようになった。これは、大手進学塾などが発表する入試偏差値という形で成果が出ている。図表1のグラフは、河合塾が毎年発表している入試難易度予想ランキングから作成した。後期重視戦略により、偏差値が70台となっていることが分かる。

 

出所:Kei-Net(河合塾)2011~26年度入試難易度予想ランキング表から作成
[図表1]2011年度~26年度の奈良医大の偏差値 出所:Kei-Net(河合塾)2011~26年度入試難易度予想ランキング表から作成

 

偏差値は、全国の進学希望者や高校の進路指導担当者が重視する基準の一つである。ただし、募集定員が少ないと推定誤差が大きくなり、偏差値の信頼性が低下する。定員5人のみで70台になるのと、50人で70台になるのとでは、意味合いが異なる。そこで、入試改革を念頭に掲げて以来、私は一貫して、募集定員が50人以上ある日程の入試、すなわち各大学が重点的に配分する日程に限って比較を行うようにしてきた。

 

Kei-Netの入試予想ランキング表に掲載された国公立大(理科系)2026年度入試難易度予想ランキング表
[図表2]国公立大 2026年度入試難易度予想ランキング【医・歯・薬・保健学系】(方式別ランク) Kei-Netの入試予想ランキング表に掲載された国公立大(理科系)2026年度入試難易度予想ランキング表

 

図表3のランキングは、この方法に基づいたものだ。河合塾のデータで、2026年度の募集人数50人以上の国公立医歯薬系入試の二次試験偏差値を見ると、奈良医大後期(募集定員53人)の二次試験偏差値は70.0で、72.5 の東大理3( 前期・同97人)、京大医学部(前期・同103人)に次いで第3位となっている。

 

([図表2]より、筆者が定員50人以上の入試区分の集計を行ったもの)
[図表3]50人以上の入試区分でのランキング ([図表2]より、筆者が定員50人以上の入試区分の集計を行ったもの)

 

年度によって若干の変動はあるものの、2013年度の入試改革以来、奈良医大後期日程入試の偏差値は、常に70以上で全国トップクラスの仲間入りを果たしている。

 

改革当初に寄せられた「全国から学生を集めても、卒業後に県外に流出してしまうのではないか」という懸念は確かに無視できない。しかし、入試の目的を「優秀な学生の獲得」と明確に定め、そのための戦略を一貫して実行したことで、奈良医大は全国医学部の中で存在感を大きく高めることができた。県内定着をいかに実現するかという課題は別途の取り組みで対応すべきであり、入試改革の本旨をぶらさずにいたことが功を奏したといえる。

 

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※本連載は、細井裕司氏による著書『挑戦する人か、文句を言う人か』(日経BP)より一部を抜粋・再編集したものです。

挑戦する人か、文句を言う人か

挑戦する人か、文句を言う人か

細井 裕司

日経BP

公立の医科大学理事長・学長による内部組織改革の実話。 著者の挑戦の根源にあったのは、地方の単科大学である奈良医大のブランド力を上げたいという思いだ。しかし、数々の改革に対しては、必ずといっていいほど「反対する…

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