残された課題
この選考委員会主体の改革によって、派閥による票集めや根回しといった不合理な要素で教授が選ばれる可能性はなくなった。さらに、これまで問題視されていた情報漏洩も解消された。大学として公正で透明性のある人事システムを構築できたことは、教育・研究の質を高めるために不可欠な基盤整備だったと考えている。
しかし、課題がすべて解決されたわけではない。将来の奈良医大のためにあえてこれを書き残したい。
教授選考委員会では、公募してきた人の業績や臨床能力を評価し、候補者を絞り込んでいる。次にその候補者を呼び、自身の研究・臨床業績のプレゼンテーションを行ってもらう。
そうなると、当日のプレゼンの出来不出来が選考委員の順位付けに影響を与えてしまうことがある。プレゼンの技術は研究者にとって重要な要素だが、いくらでも訓練や場数で向上できるものだ。積み重ねてきた論文の数やインパクトファクター、科学研究費獲得の実績、手術や治療の実績などに勝るものではない。選考委員は、プレゼンの印象次第で評価が変わる影響について、よく理解した上で選考する必要がある。
もう一つ考えなければならないことがある。この選考方式においても、公募することから始まる。しかし、公募に応募した人から選ぶ限り、あくまでも応募した人の中でベストの人を選んでいるに過ぎない。応募していない人の中により優れた候補者がいる可能性を排除している。
本来は、大学が自らベストの候補者を見つけ出し、その方に奈良医大教授への就任をお願いするべきだろうと考えている。つまり、その分野で優れた人をリストアップし、最上位の人から順に就任をお願いするのがより良い方法だと思っている。この方法を「AIシステム医学融合イノベーションセンター」の教授選考に適用し、2人の教授が決定した。
「部局長」の選考も改革
私は、教授選考方法とともに、部局長選考方法も改革した。かつては、2人の副学長(医学部長、附属病院長)や部局長(研究部長、図書館長、看護学科長、教養教育部長、基礎教育部長、臨床教育部長、看護教育部長など)も別々の選挙で選ばれており、ここでも派閥の思惑が働く可能性があった。
例えば、派閥の思惑が働くと、A派閥の人が学長選挙で選ばれた場合、1人の副学長(医学部長)は医学部長選挙でB派閥から選ばれ、もう一人の副学長(附属病院長)は附属病院長選挙でC派閥から選ばれるということが起こり得る。本来、適任かどうかを選ぶはずが、選挙になるとどの派閥に所属するかが優先されることもある。それはこの大きな組織の牽引力や判断力を弱めたりゆがめたりすることにつながっていくのだ。
先に述べた通り、2014年の学校教育法改正において、文部科学省は全国の大学のガバナンス改革を推進し、世界の大学に負けない大学にするよう指導している。私は、奈良医大の副学長2人と部局長全員を、学長が指名する制度に改革した。その後、2人の副学長のうち、附属病院長は(2017年の医療法改正に伴う特定機能病院の病院長選考手続き改正に合わせて)病院長選考委員会で選任する形に改めたが、もう一人の副学長(医学部長)をはじめとする部局長は、学長が指名する制度を継続している。
なお、私は、2つの観点から副学長と部局長を選んできた。一つは、本人の個別の能力である。それぞれその職責に適した知識と能力を要求される。もう一つは人間関係などその部署を統括する力である。
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