〈草葉の陰で大後悔〉残された家族が困惑・迷惑する「書いてはいけない遺言書」…相続現場で遭遇する5つのダメパターン【司法書士が警告】

〈草葉の陰で大後悔〉残された家族が困惑・迷惑する「書いてはいけない遺言書」…相続現場で遭遇する5つのダメパターン【司法書士が警告】
(※写真はイメージです/PIXTA)

愛する家族には、自分亡きあとも仲よく幸せに暮らしてほしい…。このような思いを抱いている方は多いはずです。しかし、家族の平穏を守るはずの遺言書も、作成方法を誤れば、逆に家族の手間を増やすどころか、想定外の紛争の火種にもなりかねません。相続事情に詳しい司法書士の佐伯知哉氏が、相続の現場でしばしば問題になる「遺言書の失敗パターン」を取り上げ、解説します。

「気持ちはよくわかる。でも、危ない…」司法書士も冷や汗

「自分亡きあと、配偶者の生活を守りたい」

「子どもたちには争ってほしくない」

 

相続の現場にいると、このような真摯な想いに触れる機会が数多くあります。

 

多くの方が「自分が亡くなったあと、家族が揉めないように…」との思いで遺言書を作成するのですが、残念ながらなかなか理想通りに進みません。

 

司法書士という立場から、相談者の方が持参した遺言書等を見る機会が多いのですが、「気持ちはよくわかる。でも、このままでは危ない」というものが非常に多いのです。内容以前に形式不備で無効となるケースもそうですが、解釈の余地があり、紛争に発展しかねないものもあります。

 

本記事では、実務で実際に見てきた遺言書の失敗事例「書いてはいけない遺言書」を、ランキング形式でご紹介したいと思います。いずれも特別なケースではありません。だれもが「作成してしまいかねない」ものばかりです。ご自分やご家族のために、ぜひ読んでみてください。

【第5位】文章の解釈に疑義が生じる遺言書

まず第5位は、「日本語として曖昧な遺言書」です。例えば、次のような文言です。

 

「不動産及び現金、預金を除く一切の財産を相続させる。」

 

一見すると問題がないように思えます。しかし、この文章には解釈の余地が残ります。

 

●「不動産」と現金・預金を除いた「その他の財産(動産など)」を相続させるのか?(不動産+その他の財産が相続の対象)

 

●それとも不動産、現金、預金を除いた「その他の財産(動産など)」のみを相続させるのか?(その他の財産のみが相続の対象)

 

●「及び」や「読点」の位置次第で意味が変わり得る

 

実務上、こうした曖昧な表現は大きなトラブルの種になります。相続人同士で解釈が分かれ、「父はこういう意味で書いたはずだ」「いや違う」と対立が生じやすいのです。

 

さらに問題なのは、遺言書は家庭内だけで完結する文書ではないという点です。預貯金の解約であれば金融機関、不動産の名義変更であれば法務局が関与します。第三者である担当者が読んだときに一義的に意味が確定しない文言は、手続きが止まる原因となります。

 

実際に、法務局から「この表現では登記できない」と補正を求められ、最終的に相続人全員の同意書を追加提出せざるを得なかったケースもあります。せっかく遺言を書いたにもかかわらず、結局は相続人の合意が必要になるという、本末転倒な結果になってしまうのです。

 

遺言書は「読み手が迷った時点で失敗」といっても過言ではありません。法律文書においては、文学的表現や婉曲な言い回しは不要です。解釈の余地を残さない明確さこそが重要なのです。

【第4位】今現在の財産状況を前提にした遺言書

第4位は、「作成時点の財産状況を前提にしてしまう遺言書」です。

 

例えば、

 

「A銀行の預金は妻に、B銀行の預金は長男に相続させる。」

 

という内容です。

 

遺言書は、書いた瞬間に効力が生じるものではありません。効力が発生するのは、遺言者が亡くなった時点です。作成から死亡までの間に、財産状況は大きく変わる可能性があります。

 

●口座を解約している

●預金を取り崩して残高がほとんどない

●逆に一方の口座だけが大きく増えている

●新たな金融機関に資金を移している

 

このような変化が生じると、当初想定していたバランスが崩れます。

 

たとえば、「妻の生活費確保」のつもりでA銀行の預金を指定したものの、医療費や介護費用の支払いでその口座残高が減少していた場合、妻にほとんど財産が残らないという事態も起こり得ます。一方で、長男に指定したB銀行の預金が大きく増えていれば、不公平感が生じるでしょう。

 

結果として「こんなはずではなかった」と相続人同士が争うことになります。

 

遺言書は“今”ではなく“死亡時”を基準に設計する必要があります。割合で指定する、最低取得額を確保するなど、将来の変動に耐えうる構造にしておくことが重要です。

【第3位】「任せる」「託す」で終わる遺言書

第3位は、「すべて長男に任せる」「妻に託す」といった表現で終わる遺言書です。

 

「相続については、すべて長男に託す。」

「財産の処分は妻に任せる。」

 

このような文言は、感情的には理解できます。「家族をまとめてほしい」「信頼しているから任せたい」という気持ちでしょう。

 

しかし、法律上は大きな問題があります。

 

遺言書は、誰がどの財産を取得するのかを確定させる文書です。「任せる」「託す」という表現では、取得させる趣旨なのか、管理を委ねる趣旨なのか不明確です。

 

その結果、結局は遺産分割協議を行う必要が生じます。遺言があっても、具体的な分配内容が確定していないため、相続人全員の合意が求められるのです。

 

相続人の中に未成年者や認知症の方がいる場合は、家庭裁判所の関与が必要になることもあります。時間も費用もかかり、当初の「争わせたくない」という想いとは逆の結果になりかねません。

 

遺言書は「判断を委ねる文書」ではなく、「結論を書く文書」です。原則として「相続させる」と明確に記載し、取得者と対象財産を具体的に定めることが重要です。

【第2位】不動産への言及が雑すぎる遺言書

第2位は、不動産の特定が不十分な遺言書です。

 

代表的な例が、「自宅は妻に相続させる。」というものです。

 

家族内では「自宅」といえば特定できます。しかし、実際に相続登記を申請する相手は法務局です。登記官は、登記簿に基づいて厳密に判断します。

 

問題点は次のとおりです。

 

●「自宅」がどの不動産か特定できない

●住居表示(住所)と登記上の地番が異なる

●土地と建物の記載が不十分

●一部が未登記である

 

例えば、住居表示が「〇〇市〇〇町1丁目1番1号」であっても、登記上の表示は「〇〇市〇〇町字△△123番地」となっていることがあります。住所で書いても登記とは一致しません。

 

また、建物が未登記であれば、そもそも相続登記の前提が整っていません。

 

不動産の記載は、登記簿謄本どおりに行うのが原則です。所在、地番、地目、地積、家屋番号、種類、構造、床面積まで正確に記載することで、初めて手続きが円滑に進みます。

 

不動産は相続財産の中でも金額が大きく、紛争の火種になりやすいものです。だからこそ、特定は厳密でなければなりません。

【第1位】形式に不備があり、そもそも役に立たない遺言書

そして第1位は、「形式不備により無効となる遺言書」です。とくに自筆証書遺言で多く見られます。

 

よくあるミスは次のとおりです。

 

●日付が「令和〇年〇月吉日」

●本文をパソコンで作成している

●署名がフルネームでない

●押印がない

●訂正方法が方式違反

 

自筆証書遺言は、民法上の厳格な方式を満たさなければなりません。全文自書、日付の特定、署名、押印という要件を欠けば、原則として無効です。

 

どれだけ内容が素晴らしくても、方式違反があれば法的効力はありません。相続人は、遺言がない前提で遺産分割協議を行うことになります。

 

「最後の意思を書いたはずなのに、なぜ認められないのか」と嘆くご家族を目の当たりにすることもあります。しかし、法律は形式を満たしていない遺言を救済してくれません。

 

これが「いちばん多くて、いちばんもったいない」失敗です。

遺言書は「心情の吐露」「家族への思い」だけでは成立しない

遺言書は「人生の集大成」であり、家族への最後のメッセージです。しかし同時に、厳格な法律文書でもあります。

 

●曖昧な表現はないか

●将来の変動に耐えられる設計か

●取得者と財産が明確に特定されているか

●方式要件を満たしているか

 

これらをひとつひとつ確認して、初めて「家族を争わせることのない遺言」になります。

 

「とりあえず書いておけば安心」という発想では危険です。むしろ、不完全な遺言は争いの火種になるからです。

 

相続は、感情と法律が交錯する分野だからこそ、専門家の視点でリスクを洗い出し、手続きに耐える内容に仕上げることが重要なのです。

 

 

佐伯 知哉

司法書士法人さえき事務所 所長

 

 

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