使いにくかった成年後見制度、柔軟な支援へ大転換…2026年以降は「オーダーメイド型」へ、改正のポイントと活用術を司法書士が解説

使いにくかった成年後見制度、柔軟な支援へ大転換…2026年以降は「オーダーメイド型」へ、改正のポイントと活用術を司法書士が解説
(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症などで判断能力が不十分になった方を支える「成年後見制度」はこれまでも重要な役割を担ってきましたが、一度開始されると亡くなるまでやめることができない、本人の自由意思が制限され過ぎるといった「使い勝手の悪さ」も指摘されていました。これを受け、現在、成年後見制度を根本から見直す民法改正案が大きな局面を迎えています。2026年4月には改正案が閣議決定され、早ければ2027年から2028年頃には新制度がスタートする見込みです。司法書士の佐伯知哉氏が制度の実情と今後の活用術を解説します。

現行の成年後見制度が抱えていた「3つの壁」

これまでの制度(現行法)では、利用をためらわせる大きな課題が3つありました。それが「終身性」の負担、過剰な権利制限、そして費用の継続発生です。

 

①「終身性」の負担

現行の成年後見制度は原則として、本人の判断能力が劇的に回復しない限り、本人が亡くなるまで継続します。例えば「遺産分割協議のためだけに一時的に利用したい」と思っても、協議が終わったからといって途中でやめることはできません。これが、少なくない報酬を終身支払い続ける負担感や心理的なハードルとなっていました。

 

②過剰な権利制限

特に判断能力が極めて低いとされる「後見」類型では、成年後見人が包括的な代理権を持つ一方で、本人の行為が制限されます。本人が自分で何かを決めたいと思っても、一律に「後見人が行うもの」とされ、本人の自己決定権が必要以上に制約されるという批判がありました。

 

③費用の継続発生

司法書士や弁護士などの専門職が後見人に選任された場合、本人の財産から月額数万円の報酬が支払われ続けます。これが何年も、時には10年以上続くこともあり、ご家族にとっては経済的な不安要素となっていました。

改正の目玉は「終わりのある後見」と「オーダーメイド型支援」

今回の改正案では、これまでの「一律・定型的」な支援から、「個別・柔軟」な支援へと大きく舵を切っています。

 

「終身制」から「必要に応じた期間設定」へ

新制度では、支援の具体的な課題(例:この不動産を売却したい、この遺産分割をまとめたい、など)に応じて、必要な期間だけ利用する、あるいは課題が解決したら終了するといった「終わりのある後見」が可能になります。

 

これにより、スポット的な利用が格段にやりやすくなります。

 

「補助」への一本化と代理権の精査

現行の「後見・保佐・補助」という3つの複雑な区分を整理し、原則として「補助」をベースとした制度に一本化される方向です。

 

オーダーメイド方式:本人の状況に合わせ、どの行為に代理権や同意権を与えるかを個別に設定します。

 

本人の意思尊重:支援者(後見人等)に権限を与える際、原則として本人の同意が必要となります。「何でもかんでも取り上げられる」のではなく、「必要なところだけ手伝ってもらう」という形に変わります。

 

「特定補助」の新設

判断能力が著しく低い方については、例外的に「重要かつ具体的な11項目の財産行為(不動産の処分など)」に限定して取消権などを持たせる「特定補助」という仕組みが検討されています。

 

これにより、本人の保護と自由のバランスをより細かく調整できるようになります。

支援者の交代も柔軟に!

これまでは、後見人が不祥事を起こしたり、死亡したりといった深刻な理由がない限り、後見人の交代や解任は極めて困難でした。

 

新制度では、「本人の利益のために特に必要があるとき」といった、より広いニーズに応じた交代が認められる見通しです。例えば、「最初は専門的な手続きのために司法書士をつけたが、落ち着いたので家族にバトンタッチしたい」といった柔軟な運用が期待されています。

「家族信託」や「任意後見」とのハイブリッド活用

専門家として強調したいのは、新制度が始まっても「家族信託」や「任意後見」の重要性は変わらない、むしろ増していくという点です。

 

法改正の背景には、これら異なる制度を組み合わせる「ハイブリッドな備え」を推進する意図があります。

 

[図表]「家族信託」「任意後見」「新・法定後見」の違い

 

また、今後、家庭裁判所が「監督の必要なし」と認めれば、任意後見において「任意後見監督人」を選任しなくてもすむようになるなどの見直しも検討されています。

 

これにより、任意後見のコスト面でのデメリットも解消されていくでしょう。

どのように対策を進めるべきか?

新制度のスタートは数年先ですが、今まさにご両親の認知症対策が必要な人は、以下のステップで検討を進めてください。

 

①すでに認知症を発症し、判断能力がない

状況が急を要し、法改正を待つ余裕がない場合は、現行のルールで申し立てを行います。将来的には新制度のメリット(終了の可能性など)を享受できる道も残されると想定されます。

 

②今現在は判断能力を有している

判断能力があるうちなら、裁判所の関与を最小限に抑え、自由度の高い管理ができる「家族信託」や「任意後見」を優先的に検討すべきです。

 

③様々な条件や希望があり、最適な制度を探したい

どの制度が最適かは、資産構成や家族構成によって異なります。特に新制度導入前後の過渡期は、制度の使い分けに高度な判断が求められるため、専門家への相談をお勧めします。

 

このように、成年後見制度の大改正は単なる手続きの変化ではなく、「本人の意思を尊重し、必要な分だけ支える」という大きな理念の転換です。

 

「家族に迷惑をかけたくない」「自分の財産は自分で守りたい」という想いを実現するために、新しい制度を賢く利用する準備を始めましょう。

 

 

佐伯 知哉

司法書士法人さえき事務所 所長

 

 

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