
今回は、売上高に比べて売上総利益が少ないというケースについて、その要因を見ていきます。※本連載は、毎年多くの簿記検定合格者を輩出する簿記の教室「メイプル」の代表、南伸一氏の著書『オールカラー“ギモン”から逆引き! 決算書の読み方』(西東社)の中から一部を抜粋し、決算書に対するよくある疑問点を題材に、会社の実像を見抜く方法をご紹介します。
残業による給料増加が利益を圧縮していないか?
Q:「売上高」は多いけど「利益」が出ていない?

「貧乏暇なし」という言葉がありますが、これを会社に当てはめると、「売上高は多いけど利益が出ていない」ということになります。毎日毎日、従業員も夜遅くまで残業して頑張っており、同業他社と比べると売上高も販売数量も多いのに、なぜか本業の利益が出ない・・・というケースです。
このような場合、原因は2つ考えられます。ひとつ目の原因は、前のテーマでも述べた人件費がかかりすぎているケースです。もしかすると、従業員のみなさんが残業して頑張って売上高や売上総利益を増やしても、残業による給料の増加の方が上回ってしまっているのかもしれません。
残業による売上総利益の増加<残業による給料の増加
この場合、残業をしない方が、よっぽど営業利益が残ることになります。小売店で営業時間を延ばしたにもかかわらず、結局、もとの営業時間に戻すのも、コストに見合わないこのケースになります。
売上高総利益率が低いときにチェックしたい3項目
もうひとつの原因は、「売上総利益」そのものが少ないケースです。もしも、売上総利益が少ないと感じたら、同業他社の売上高総利益率と比較してみるとよいでしょう。同業他社の売上高総利益率より明らかに低いようであれば、以下の点をチェックすることで、会社の利益に対する姿勢が見えてきます。
<売上高総利益率が低いときのチェック項目>
利益が出ていないときは、理由として次の①〜③の項目を疑ってみよう。

<売上高総利益率の求め方>
売上高総利益率は業種で大きく変わります。日本企業の各業種の平均値は、以下の表のようになっています。
