浮上する「米景気楽観論」の反面、要注意の最高裁判決
ところで、日米金利差の動きでは説明しきれない2025年以降の米ドル高・円安について、比較的うまく説明できそうなのが、ヘッジファンドの取引動向を反映したCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋ポジションです。
投機筋ポジションは2025年4月末、空前規模の米ドル売り・円買いを記録。その後、この円買いポジションが縮小に向かった動きは、基本的に米ドル高・円安の進行に沿った展開でした(図表6参照)。
こうした点を踏まえると、日米金利差縮小を尻目に米ドル高・円安が進んだ背景のひとつに、ヘッジファンドによる円買いポジション解消に伴う円売りが影響した可能性があります。
ヘッジファンドによる円買いポジションの解消は、2025年12月に入ったところで一巡したようです。そしてこの前後から、米ドル高・円安も足踏みが目立つようになりました。
したがって、米ドル高・円安がさらに拡大するかどうかは、ヘッジファンドが米ドル買い・円売りを本格化させるかどうかがひとつのカギを握るといえるかもしれません。
ヘッジファンドは「円売り」を再開するのか?
ヘッジファンドは、2024年までは米ドル買い・円売りを積み増し、「歴史的円安」をけん引した存在とみられていました。
しかし2025年にトランプ政権が発足すると、米ドル売り・円買いへと急転換し、現時点まで米ドル買い・円売りへの再転換は確認されていません(図表7参照)。これには、「貿易相手国の通貨安を好まない」というトランプ大統領の姿勢が影響している可能性があると考えられます。
ここまでみてきたように、日本政府が自力で円安を食い止めるにはかなり厳しい局面に入っている恐れがあります。
ただし、トランプ政権の通貨政策の“代役”のような存在であるヘッジファンドが円売りを再び拡大しないのであれば、そこにはトランプ政権による円安抑制・是正の意向が反映されている可能性も考えられます。今後の注目点のひとつでしょう。
今週の米ドル/円予想レンジは「155~160円」
今週はCPI(消費者物価指数)をはじめ、注目度の高い米経済指標の発表が多く予定されています。
すでに9日に発表された米12月雇用統計を受け、1月FOMCでの利下げが見送られる見方が強まっていることに加え、一部では2025年10~12月期の米GDP成長率が5%超になるとの予想も浮上しています。
このように、予想以上の「米景気楽観論」が広がるなか、今週の米景気指標もそれを後押しし、米金利上昇=米ドル買いにつながるかという点が注目されます。
一方、9日に出るとの見方もあったトランプ関税に関する米最高裁判決は見送られ、一部では14日との見方も出ています。もしこれが違憲と判断され、米国株が暴落するようであれば、基本的には米金利低下=米ドル安・円高要因となるでしょう。
以上を踏まえ、今週は円安方向・円高方向のいずれにも大きく振れやすいリスクがあることから、米ドル/円は「155~160円」と予想します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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