2月25日~3月2日の「FX投資戦略」ポイント
<ポイント>
・衆院選後は予想外に円高。これは高市積極財政継続なら債券安との予想に反し債券高になったため。
・一方再確認されてきたのは高市総理の円安容認、利上げ反対姿勢。それに米政権内にも不安視がありそう。3月の日米首脳会談が円安、金利上昇の重要な転換点になる可能性あり。
・3月の米ドル/円予想は、いまだレンジ・ブレークの決め手不足のため、152~160円で予想する。(第1週予想は最後をご参照ください)。
2月の振り返り=衆院選後は予想外に152円まで円高
自民党の歴史的圧勝=予想外だったのは債券、超長期債の反発
2月8日に日本の衆院選挙が行われ、自民党の歴史的圧勝となりました。自民党の勝利自体は基本的に選挙前から予想されていたものでしたが、そうなった場合高市政権の積極財政を懸念した債券安・円安が再燃するとの見方が多かったところが、結果的にはそれとは逆に債券高・円高となりました(図表1参照)。ではそれはなぜか。
選挙前までの円安は、基本的に日本の長期債、とくに30年物国債など超長期債価格の下落に連動したものでした。ところがそんな超長期債相場は1月下旬、日米の通貨当局が、経験的に為替介入の前段階の行為とされる「レートチェック」を行った頃から反発に転じ、さらに衆院選挙後も自民党勝利なら下落再燃との見方に反し一段の反発に向かいました。すでに述べたように、選挙前は日本の財政を懸念した長期債と円の売りが続いたと理解されていたところ、そのうちの長期債が反発に転じたことから円も反発に転じたということが基本だったのではないでしょうか(図表2参照)。
債券安一服で米ドル/円と日米金利差との相関関係が復活
米ドル/円は、超長期債中心に日本の債券価格が大きく下落するなかでは日米金利差変化でほとんど説明できない動きが続きました。ただそんな債券価格の下落が一段落すると、金利差との相関関係もある程度復活するところとなりました。
衆院選挙後に一時152円台まで米ドル安・円高となった動きは、基本的には日米金利差(米ドル優位・円劣位)縮小に沿ったもので、その後156円台後半まで再び米ドル高・円安に戻すところとなったのは、日米金利差拡大である程度説明できそうでした(図表3参照)。
それにしても、2026年に入ってから2月までの米ドル/円は、基本的に152~159円のレンジを右往左往し、これまでのところ先行きのトレンドが定まるには至っていないでしょう。では3月は159円を超えて米ドル高・円安に向かうのか、それとも152円を割れて米ドル安・円高に向かうのか。
3月の注目点=「日本の財政懸念の円売り」は終わったのか!?
金利差で説明できない「異例の円安」
選挙前に、一時160円に迫るまで米ドル高・円安となった動きは、日米金利差縮小から異例なまでに大きく長くかい離し、その意味では金利差との関係からは「異例の円安」でした(図表4参照)。
そして、そんな「異例の円安」をかなりの割合説明できそうだったのは、日本の長期金利、10年債利回りの上昇でした(図表5参照)。この長期金利上昇は、日本の財政リスクへの懸念が主因とされました。このため金利差で異例なほどに説明できない「異例の円安」は、日本の財政リスクへの反応、つまり「財政懸念の円売り」による結果と考えられました。以上からすると、再び160円に向かう円安再燃となるかは、衆院選後一服した形となった財政懸念が再燃するかが最大の焦点になるでしょう。
米政権内にもあった高市政権への不安視
衆院選後、事前の予想に反し債券高・円高に反応したのは、連立与党が予想以上の大勝となり政権基盤が安定化したことにより、ポピュリズム的に財政規律を維持できなくなる懸念が後退したためといった解説が基本だったでしょう。ただし高市総理は、選挙公約とした消費税減税を進める方針を今のところ変えていないようです。以上のように見ると、選挙前まで高市政権の積極財政を懸念した「財政懸念の円売り」の流れが転換したのか、まだ微妙ではないでしょうか。
このような高市政権の経済政策に対しては、金融市場だけでなく、実は米トランプ政権内でも不安視されている可能性がありそうです。2月23日付けの日経新聞によると、1月下旬にスイス・ダボスで行われた片山財務相との非公式会談で、ベッセント米財務長官は、「高市首相はこのままではトラスになるか、メイになってしまうのではないか」と、財源が曖昧なまま大減税を発表し、英国の通貨・債券・株「トリプル安」の「トラス・ショック」を招いた人物に重ねるような発言を行ったとされます。
その上で、2月25日付けの日経新聞は、1月23日の日米「レートチェック」が、円安を阻止するための日本からの協力要請を受けたものではなく、ベッセント長官主導だった可能性を報じました。23日付け報道と合わせると、ベッセント長官は、高市政権の円安・金利上昇回避姿勢に懐疑的で、だからこそそれが米経済に悪影響となることを回避するべく、米国主導で円安けん制の「レートチェック」に動いた感じもなくはないでしょう。
高市総理の本音は円安容認、利上げ反対で変わらず!?
衆院選挙中の、高市総理による「円安は輸出企業にとって大チャンス、外為特会にはホクホク」といったいわゆる「ホクホク発言」、そして2月25日付けの毎日新聞による2月の植田日銀総裁との会談で追加利上げに難色を示したといった報道などを合わせると、2024年の自民党総裁選挙なかの「今金利を上げるのはアホやと思う」といった具合の円安容認、利上げ反対の姿勢は今でも基本的に変わっていない可能性がありそうです。
これまで見てきたように、高市総理の円安容認、利上げ反対といった基本姿勢に変化がなく、それに対してむしろ米政権内に米経済への悪影響を阻止するといった観点から反対の考え方があるなら、衆院選挙前までの「財政懸念の円売り」再燃の有無は、3月に予定されている高市総理とトランプ大統領による日米首脳会談が大きな焦点になりそうです。
日米の金融政策発表も予定される3月
一方で、米ドル安・円高へ向かう要因としては、日米金利差縮小が鍵になるでしょう。日米の金融政策は、日本が利上げ、米国が利下げと逆方向を目指すなかで、金利差は基本的に縮小に向かう可能性が高いと考えられます。ただ2月には、上述のように高市総理による追加利上げへの難色といった報道、その一方で米国では次期FRB(米連邦準備制度理事会)議長人事や強い景気指標が利下げ見通しを後退させるところとなり、その結果金利差拡大となりました。
3月は、日米ともに金融政策発表が予定されていることから、それらを受けてこの先の金融政策の見通しが日米金利差にどう影響するかも、米ドル/円の行方を考える上での注目点になります。
3月の米ドル/円予想レンジは152~160円
以上を踏まえると、3月の円安要因として注目されるのは、日米首脳会談をにらみ、高市総理の円安・長期金利上昇の回避姿勢が試される可能性ではないでしょうか。一方の円高要因としては、やや不安定になってきた株価動向などの影響も受けて、日米の金融政策が金利差縮小にどれだけ影響するかに注目したいと思います。その上で、3月の米ドル/円はいまだ2月までのレンジ・ブレークの決め手不足なので、152~160円で予想します。
今週の米ドル/円は154~159円で予想
米国とイスラエルによるイラン攻撃を受けた原油価格への影響が注目されます。原油価格が大きく上昇するようなら円売り要因となるでしょう。6日には米2月雇用統計発表が予定されており、それがこのところの米早期利下げ予想後退の流れにどう影響するかが注目されます。
また日本の国会における高市総理の円安容認や利上げ反対姿勢への反応も要注意でしょう。株価急落がなければ、基本的には円安バイアスが強い展開となりそうなので、衆院選後の米ドル高・円安のピーク更新もあり得るとの考え方から154~159円で予想します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
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