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晩婚夫婦に訪れた幸せと、現在の苦悩
Aさんは75歳。夫はすでに亡くなっています。現在の年金収入は、自身の老齢年金と遺族年金を合わせて年額210万円(月額約17万円)です。夫が亡くなった際に団体信用生命保険で住宅ローンは完済されており、おひとり様であれば年金のみで十分に生活できる水準でしょう。
しかし現在、Aさんの生活は困窮しています。同居する34歳の息子が働かず、引きこもり状態で親の年金や貯蓄をあてにしているからです。
遡ること数十年前。Aさんは学生を卒業してから、中小企業の事務職として就職しました。当時は、身内の介護も担っていたため、時間的にも金銭的にも余裕がなく、「自分は結婚できないだろう」と半ば諦めていました。転機が訪れたのは、親を見送り、30代になってからのこと。同僚の紹介でお見合いをすることになったのです。相手は同じ会社の企画部に所属する男性でした。「大人しい性格で出会いが少なかった」という彼と意気投合し、Aさんが40歳、夫が41歳のときに結婚しました。
晩婚だったため、子どもは難しいかもしれないと考えていた矢先、すぐに子宝に恵まれます。夫婦にとって待望の我が子でした。息子がはたちになるころには、夫婦ともに60歳を超えます。夫は「この子が大学を卒業するまでは」と定年後も再雇用で働き続けました。
一方のAさんは高齢出産の影響か、産後に体調を崩して仕事を退職。息子が中学生のころから夫を支えるためパート勤めを始めました。
「朝起きられない」…就職1ヵ月で退職した息子
手塩にかけて育てられた息子は、Aさん夫婦の愛情を一身に受け、何不自由ない生活のなかで大学へ進学します。卒業後は同級生と同じように就職しましたが、いままでアルバイト経験すらなかったためか、わずか1ヵ月程度で退職してしまいました。
理由を尋ねると、息子はこう答えました。「朝が起きられない」「会社の人は俺のことをよく思っていない」「家でやりたいことをしていたい」
子どもができた喜びから、少し甘やかして育ててしまったかもしれない――。Aさんは自責の念に駆られつつも、コロナ禍を経てテレワークなど多様な働き方が広がっていることを説き、「やりたいことをするのもいいが、自立できるよう将来を考えてほしい」と伝え続けてきました。

