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早すぎる夫の死、75歳での肉体労働
晩婚に加え、独身時代は介護に追われていたAさんには、十分な貯蓄があったわけではありません。夫も家の事情で貯蓄は多いほうではなく、「働けるうちは働き続けよう」というのが夫婦の約束でした。
そんなある日、夫に癌がみつかり、70歳で帰らぬ人となります。大黒柱を失ったAさんの家計は、住居費の負担がないとはいえ、毎月5万円の赤字です。「自分が働けなくなれば生活が破綻する」Aさんは貯蓄を減らさないため、75歳になったいまも清掃のパートに出て、必死に生活を支えています。
「いつか息子も前向きに仕事を探してくれるだろう」そう信じて、疲れた体で帰宅しても、そこには絶望的な光景が広がっています。家事を手伝うわけでもなく、台所には食べ終わった食器が水も浸けずにそのまま。居間の暖房はつけっぱなし。息子は自室にこもり、ゲーム三昧の生活を続けていました。長年の献身は報われないのか。Aさんは次第に悟るようになります。
息子の暴言が引き金に
息子は可愛い。しかしながら、自分はいつまで働けるかわからない。自分が亡くなったあと、息子は一人でどうするのだろうか。食事中も、入浴中も、仕事中も、不安は尽きません。このところ、慢性的な倦怠感と胃痛・吐き気があり、仕事を続けることに限界を感じていました。
決定的な出来事が起きたのは、ある年の元旦のこと。世間が新年を祝うなか、息子はいつものようにこたつに入り、年始の特番をみながら笑っていました。その姿をみた瞬間、Aさんのなかでなにかが切れたのです。
Aさんはテレビの前に歩み寄ると、突然、テレビの電源を消しました。「おい、なにするんだよ!」不機嫌になる息子に対し、Aさんは意を決して、震える声で切り出しました。
「いい加減、今年からはアルバイトでも働いて自立したらどうか。私もそう長くは生きられないだろうから、一人でも生活できるようにしないと、死ぬに死にきれない」
すると、息子から返ってきたのは信じがたい言葉でした。「あんたたちが俺を甘やかして育てたんだ。いまさら働けといわれても無理だ。最後まで責任とれよ! 俺のためにできる限りお金を残すのが親の責任だろう」
この暴言に、Aさんは言葉を失いました。育て方を誤ってしまったという激しい後悔とともに、ある決意を固めます。「これが親としての、最後の教育だ」と。
これまでAさんは、夫の死後、息子が困らないようにと、公正証書遺言を作成していました。「少しでも生活の足しになれば」という親心でした。しかし、「これでは財産を使い果たすまで、あの子はなにもしないだろう」と確信したのです。

