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「この土地、掘り出し物ですよ」
「社長、この土地……本当に掘り出し物なんです」
夕方のホテルラウンジ。ガラス越しの夕日がテーブルの書類を淡く照らし、ジャズとグラスの音が混ざり合うなかで、山崎社長(仮名/46歳)は、営業マンの言葉にゆっくり顔を上げました。社員も増え、問い合わせは毎日途切れず、会社は絶好調。脱サラした当時の自分は、年収3,000万円クラスのいまの自分を想像できたでしょうか。ちょうど「そろそろ次の一手を」と考えていたタイミングでした。
「市場にはまだ出ていない“裏の情報”でして……社長のような方にだけ、先にお話しています」
“社長のような方にだけ”。その一言が、じんわりと胸に刺さります。登記簿、公図、売主の情報。ページをめくるほど、疑う理由がひとつもみつかりません。“選ばれた者”にだけ開く扉が、いま目の前に現れたように感じました。
「……わかりました。話を進めましょう」
社長は静かに答えました。その瞬間、営業マンがわずかに口角を上げたことに、彼は気づいていませんでした。そして、この“甘い話”が数ヵ月後、悪夢になるとは、知る由もなかったのです。
数ヵ月後、経理部長が放ったまさかの一言
月末の午後。いつも冷静な経理部長が、青ざめた顔で社長室に入ってきました。
「……社長、先日の“売主”、本人ではない可能性があります」
空気が、音を立てて沈みます。「本人ではない? なにをいってるんだ」笑おうとしましたが、声は乾いていました。差し出された最新の登記簿には、確かに“売主の名前”が載っています。しかし――経理部長は、低い声で続けました。
「……別人が“本物の売主を装っていた”可能性があります。提出された身分証と印鑑証明に、微妙に合わない部分がみつかりました」
