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毎年恒例“節税自慢ショー”の終焉
確定申告シーズンを迎えた、ある冬の夕方のこと。繁忙期で慌ただしい税理士事務所の面談室に、勢いよく入ってくる男性がいました。
「先生っ! 今年も“完璧に節税”してきましたよ!」
声の主は山根社長(仮名/45歳)。毎年この時期になると現れる、“節税に取りつかれた男”です。
両手には、分厚い領収書ファイル。中には ぎっしりホチキス留めされた領収書の束がぎっしりと詰まっています。
— 飲食代
— ガソリン
— スマホ
— 文具
— なんとなく買ったモバイルバッテリー
— 内容があいまいな業務委託料
社長にとって節税は、もはや「会社を守る手段」ではなく、“趣味” と化していました。税理士の前に座ると、すでに胸を張っています。
「これ全部、経費になりますよね? みてくださいこの量!」「今年は特に気合を入れて集めましたから」
毎年恒例の“節税自慢ショー”が幕を開けようとした―― そのときでした。“経費の一覧ページ”を開いたところで、税理士の手がピタリと止まったのです。
山根社長は、まだニヤニヤしています。「どうです先生? 今年も“節税の達人”って呼んじゃってくださいよ〜」
しかし、税理士は笑っていませんでした。「……山根社長。これ……見えますか?」「え、どれです?」「本来なら、もっと数字が残るはずの欄です。」
税理士が指差したのは、帳簿の一番最後。社長は思わず覗き込みます。
「……あれ? こんな数字でしたっけ?」
少し間を置いて、税理士は告げました。「はい。今年は――思っていたより、桁がひとつ少ない数字になっています」
その一言で、社長の笑顔がすっと消えました。長年続いた“節税自慢ショー”が、静かに終わった瞬間でした。
