(※写真はイメージです/PIXTA)

2020年に始まった「自筆証書遺言書保管制度」。遺言者が亡くなると、指定された通知対象者に知らせが法務局から届く仕組みです。この通知は、遺言の発見を確実にする一方で、相続人にとっては「寝耳に水」の衝撃をもたらす引き金となることも……。本記事ではFPオフィスツクル代表の内田英子氏が、予期せぬ相続の結末に翻弄された事例から、不確実な未来への備え方を学びます。※本記事で取り上げている事例は、複数の相談をもとにしたものですが、登場人物や設定などはプライバシーの観点から一部脚色を加えて記事化しています。読者の皆さまに役立つ知識や視点をお届けすることを目的としています。個別事例の具体的な取り扱いは、税理士・弁護士・司法書士など専門家にご相談ください。

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「タワマンを私たちが相続するはずだったんです」

Aさん(66歳)とBさん(64歳)は、地方都市で暮らす年金生活の夫婦です。2人あわせた年金額は月21万円。持ち家はあるものの、預貯金はおよそ1,000万円。最近の物価高や将来のことを考えると、「このままで本当に足りるのだろうか」という不安が常につきまとっていました。

 

そんな2人にとって、心のどこかで“老後の切り札”のように感じていたのが、Bさんの9つ年上の姉Cさんの存在です。Cさんはもとキャリアウーマン。港区にタワーマンションを所有し、退職金も約3,000万円受け取ったと聞いていました。

 

「姉は子どもがおらず、独身だから、私が相続人になるのでは?」

 

少なくとも、Bさんはそう信じていました。2人は、決して口には出さなかったものの、「相続があれば、私たちの暮らしはだいぶ楽になる」そんなふうに、心の中で“計算”してしまっていたそうです。

 

法務局から突然届いた「自筆証書遺言保管」の通知

ところが、Cさんが急逝したあと、Bさん夫婦は思いもよらない事実と向き合うことに。

 

状況が大きく動いたのは、Cさんが亡くなって数週間が経ったころでした。Bさんの自宅ポストに、法務局から一通の封書が届いたのです。封を開けてみると、それはCさんの残した自筆証書遺言の存在を知らせる手紙でした。

 

Cさんは生前、自筆証書遺言を作成し、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用して預けていました。この制度では、遺言者があらかじめ指定していた人に対して、亡くなったあと「遺言書が保管されています」と通知が届く仕組みになっています。手紙には、遺言書が保管されている法務局の名称や、遺言者の氏名などの情報が記載されており、たしかにCさんが残したものだとわかりました。

 

このような制度があることすら知らなかったBさんは驚き、今後の相続手続きについて司法書士に相談に行くことにしました。

 

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次ページ司法書士から告げられた衝撃事実

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