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司法書士による調査で判明した「まさか」の事実
「まずは法務局で遺言の内容を確認しましょう。あわせて、Cさんの戸籍を出生から死亡まで辿って、相続人の範囲や不動産の名義を確認します」Bさん夫婦は、司法書士に法務局からの通知をみせ、一連の手続きを依頼しました。
後日、司法書士事務所の応接室に座ったAさん夫婦の前には、たくさんの書類の束や封筒が置かれていました。そこで2人は、衝撃の事実を知ることになります。
戸籍を追っていったところ、CさんにはかつてDさんという夫がいたものの、数年前に離婚しており、現在は「元夫」であること。そして、不動産の登記簿を確認したところ、タワーマンションはCさんと元夫Dさんとの共有名義になっていたことが判明したのです。
「いつの間に結婚していたの……?」Bさんは、結婚の話など、姉の口から一度も聞いたことがなかったといいます。唐突に知らされた姉の意外な一面に、ショックで言葉を失いました。
衝撃に追い打ちをかける「遺言の中身」
続いて2人は、法務局から取り寄せた遺言書情報証明書のコピーをみながら、Cさんが残した遺言書の内容について説明を受けました。そこには見知らぬ名前が……。
「え、誰……?」Aさんは混乱しました。遺言書には下記のような説明があったのです。
〇タワマンのCさんの持分は元夫Dに遺贈する。
〇金融資産はBさんに相続させる。
タワマンについては、姉の持ち分を元夫Dさんに渡す。つまり、Bさんはタワマンを相続しない、という内容でした。
「タワマンが相続できると思っていたのに……」Bさんは、期待していた“老後の切り札”が消えたことに、肩を落としました。さらに金融資産の残高を確認すると、その額は約900万円。退職時には3,000万円あったと聞いていましたが、生活費や医療費の支出、運用商品の解約などを経て、亡くなった時点では大きく目減りしていたようです。
兄弟姉妹の相続で「勘違い」しやすいポイント
ここで少し、兄弟姉妹の相続について整理しておきましょう。子どもがいない人が亡くなった場合、相続人になるのは「配偶者」と「親」や「兄弟姉妹」など、法律で決まっています。兄弟姉妹は、子どもや親がいないときにはじめて登場する“3番目の順位”の相続人です。
また、兄弟姉妹には「遺留分(最低限の取り分)」がありません。そのため、遺言書で配偶者や第三者に多く遺す内容になっていると、「兄弟だけど、ほとんど受け取れない」「思っていたより少ない」ということも起こりえます。
今回のケースでは、元夫Dさんは相続人ではありませんが、遺言による「遺贈」を受ける立場として、タワマンの持分を取得することになりました。一方、妹Bさんは法定相続人ですが、遺言の内容によりタワマンを引き継がず、金融資産のみを相続する形となったのです。
