定年後も働く70歳バツイチ男性
地方都市で一人暮らしをする山本和夫さん(仮名/70歳)。山本さんは40代のときに離婚し、その後は実家へ戻り、現在もその家で暮らしています。地元の中堅企業に勤めて65歳の定年まで働き続け、退職した現在は運送会社の宅配業務を業務委託として請け負っています。
ガソリン代や車両費などは自己負担であり、車の維持費などの経費を差し引くと、手元に残る事業収入は月8万円ほど。これに厚生年金などの月15万円を合わせれば、月23万円ほどの収入になります。資産と呼べるものは、古くなった実家の土地と建物、そして約200万円の預金です。
一人暮らしであれば十分な額に思えるかもしれませんが、正直、生活に余裕はありません。山本さんの毎月の支出内訳をみると、国民健康保険料や介護保険料、税金などの非消費支出に約4万円。食費に約6万円。築年数の古い実家の修繕積立や固定資産税の月割りが約3万円、水道光熱費が約2万円。さらに、持病の薬代などの医療費、日用品、業務に必須のスマホの通信費などで約5万円がかかります。合計すると毎月の支出はおおよそ20万円に達し、手元に残る余裕資金はわずか3万円ほど。
平日は片道5キロ離れた配送センターへ車で通い、仕事帰りにスーパーへ立ち寄って酒を買い、晩酌するのがささやかな楽しみでした。
「贅沢はできないけど、まあ普通の生活はできている」
そう感じていた山本さんですが、最近は少し希望もみえていました。長年議論されていたガソリン暫定税率が廃止され、ガソリン価格が下がっていたからです。
「これなら少しは貯金もできるかもしれない」
そんな期待を抱いたものの、中東情勢の悪化を受け、事態は一変します。
中東情勢の悪化で価格急騰
アメリカとイスラエルによるイラン攻撃のニュースを受け、今後ガソリン価格の値上げが起きるという話を聞き、山本さんは不安になっていました。それからほどなくして、仕事の途中でガソリンスタンドに立ち寄った山本さんは、そこに出された価格表示をみて思わず目を疑います。
「えっ、こんなに上がってるのか……」
中東の緊張が高まり、タンカー航路の要となるホルムズ海峡をめぐる有事への警戒感から、原油価格が急上昇したのです。その影響は、すぐにガソリン価格へと波及しました。暫定税率の廃止によって一時的に下がっていたはずのガソリン価格は、あっという間に以前を上回る水準へ。
山本さんの仕事は車がなければ成り立ちません。配送の仕事を続ける以上、ガソリン代の上昇はそのまま収入の減少を意味します。
業務委託の配達員は、ガソリン代が上がったからといって委託報酬(売上)にその分が上乗せされるわけではないのです。たしかにガソリン代は事業の「経費」として計上できるため、翌年の確定申告で税金はわずかに安くなります。しかし、ガソリンスタンドで支払う「手元の現金」はその月に確実に出ていくため、日々のキャッシュフローはダイレクトに悪化します。売上が変わらないまま経費だけが膨らめば、月8万円だった事業収入はたちまち目減りし、ギリギリで回っていた家計の余裕を奪っていきます。
「仕事を辞めたあとのお金は、これから少しずつ貯めようと思ってたんだけどな……」
そうつぶやきながら、山本さんは給油機の前でしばらく立ち尽くしていました。国際情勢など、自分ではどうすることもできません。それでも生活は続いていきます。いつまでこのガソリンの高騰が続くのか、不安を抱えながらハンドルを握る日々です。
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