「ホンダ」希望退職、「日産」工場閉鎖…中国市場で“総崩れ”の日本車メーカー。最後の砦「トヨタ」も例外ではない苦境

「ホンダ」希望退職、「日産」工場閉鎖…中国市場で“総崩れ”の日本車メーカー。最後の砦「トヨタ」も例外ではない苦境
(※写真はイメージです/PIXTA)

かつて高品質と低燃費を武器に中国市場を席巻した日本車が、今、深刻な転換期を迎えている。BYDなど現地メーカーのNEV攻勢の前にシェアは急落。ホンダは希望退職に踏み切り、日産は工場を閉鎖。最後の砦と見られたトヨタでさえ、ブランド力の低下が囁かれる。湯進氏の著書『2040中国自動車が世界を席巻する日』(日本経済新聞出版)より、中国市場における日本の自動車メーカー各社の戦略と課題を分析していく。

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中国事業の再編続く「マツダ」、販売激減でガソリン車の活路探る

マツダは1992年に海南汽車(1997年に第一汽車に吸収された)に対する技術供与の形で中国事業をスタートし、2005年には第一汽車と合弁で一汽マツダを設立した(マツダ車両の委託生産)。2012年にはフォードとマツダの資本提携解消を受け、長安フォードマツダは「長安フォード」(重慶市・フォードブランド車生産)と「長安マツダ」(南京市・マツダブランド車生産)の2社に分離された。

 

マツダの販売台数は、2024年に8.3万台となり、ピークであった2017年の4分1程度に縮小。MAZDA3とCX-5の販売台数が中国販売全体の7割を占めている。2023年には、第一汽車への生産委託を終了し、生産を長安汽車との合弁会社、長安マツダの南京工場に集中させている。ラインアップが少なく、従来のパワートレインの最適化で差別化を図るマツダにとっては、厳しい戦いを迫られている。

 

国有パートナーとの提携関係を勘案すれば、「ニッチなガソリン車ブランド」のレッテルを貼られながらも、黒字体制を維持すべく工夫する必要がある。

 

販売台数維持のための値下げ攻勢が、最大の武器「トヨタブランド」を蝕むジレンマ

日本の自動産業を牽引するトヨタには、中国市場でも厳しい試練が待ち受けているといえる。

 

VWが1984年に上海汽車と合弁で上海VWを設立し、外資の先陣を切って中国に進出した。その16年後の2000年、トヨタは一汽トヨタ(第一汽車との合弁)を、2004年には広汽トヨタ(広州汽車との合弁)を設立し、中国での2社合弁体制を確立。その後は、中国のモータリゼーション拡大に伴い、トヨタの販売台数は右肩上がりで伸びてきた。

 

トヨタは、豊富なラインアップでHVを強みとし、多様なニーズに対応している。カローラやレビンなど主力セダンの販売台数が減少するなか、トヨタは最新HVシステムの「第5世代THS」を搭載した小型クロスオーバーSUVの「カローラクロス」および姉妹車の「フロントランダー」を投入し、10万元を切る水準まで値下げして、セダン販売の減少分を埋めている。

 

こうした製品戦略により、トヨタの販売台数は2021年から3年連続で190万台を超え、中国進出以来最も高い水準を維持していた。2024年には、前年比6.9%減の177.6万台となり、他社と比較しても落ち込み幅は小さい。

 

一方、日系企業同士の競争も激しい。2024年の中国に投入する車種数をみると、ホンダが24車種、トヨタが19車種で、ともにフルラインアップ戦略をとっている。日産が7車種、マツダが5車種となり、車種数を絞っている状況である。2024年の出荷台数5万台超の車種をみると、トヨタが13車種であるのに対し、ホンダと日産はそれぞれ4車種、3車種にすぎない。

 

現在、トヨタの中・高価格車の販売台数は、中国販売全体の3割超を占めている。トヨタが値引き攻勢で販売台数を維持していくと、それが日系同士の新車販売に影響を与える。しかし、さらなる値下げに踏み切ると、日本車のブランド力の低下が懸念される。競合ブランドと比べて中古車として売る際のリセールバリューの高さ、ブランド力が反映される重要な指標となるが、ここで気になる動きが見られる。

 

中国汽車流通協会による2024年末の平均リセールバリュー(車齢3年)をみてみると、日産が50%、マツダが51%であるのに対し、トヨタは56%となり、初めてホンダ(57%)に抜かれた。ガソリン車ブランドのなかで、トヨタのリセールバリューは高いといえるが、2021年に87%であったことから、近年の値下げ販売により、ブランド力に低下の傾向があると考えられる。

 

 

湯 進

みずほ銀行

ビジネスソリューション部上席主任研究員
 

 

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※本連載は、湯 進氏による著書『2040 中国自動車が世界を席巻する日』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

2040 中国自動車が世界を席巻する日

2040 中国自動車が世界を席巻する日

湯 進

日本経済新聞出版

BYDの実力、群雄割拠の各社の戦略、CATLが見ている未来……。 知能化でどう変わるのか、産業政策の実態は、日本企業は2040年の市場で勝てるのか――。電動化を追い風に爆発的に成長した中国自動車産業。本書は、成長を生み…

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