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世界の「EVシフト」に水を差す「電池発火」問題
2024年8月、韓国仁川でEVから発火した大規模火災の発生が社会に大きな影響を与えた。発火した独メルセデス・ベンツグループのEVには、中国電池メーカーである孚能科技(ファラシス・エナジー)製電池が搭載されていた。「電池の安全性と信頼性を保証できない」といった論調が聞こえてくるだけでなく、電動化シフトにも暗雲が立ち込めている。
消費者にとって重要なのは、EVの対ガソリン車のコストパフォーマンスだけではない。利便性や安全性も重要なポイントであり、特にEV性能を左右する車載電池の品質向上は欠かせない条件だ。
EVの安全性や信頼性が依然懸念されるなか、中国工業情報化省は2024年6月に最新版の電池規制、「リチウムイオン電池業界規範条件」を発表。徹底的に電池発火を防ぐ策として、電池材料を含む生産技術と製品技術の向上を求めるなど、参入条件の厳格化により、電池産業の「量の拡大」から「質の高い発展」を図ろうとしている。
中国は国家基準を刷新…電池の未来を握る「3つの改定」
電動化シフトの推進に伴い、中国工業情報化省は2015年からリチウムイオン電池の安全性に関わる国家基準を施行した。
2018年と2021年に改定し、企業の売上高R&D比率3%以上、前年度の工場稼働率50%以上、主要製品の発明特許の保有などの選定条件を規定している。今回は3回目の改定であり、3つの変更点をあげておこう。
1.生産工程における技術の向上
1つ目は、生産工程における技術の向上。電池メーカーがペースト状の混合材料を金属箔に塗布した電極の測定・脱水技術を持ち、電極の含水量(10ppm)と均一性(厚さ2μm、長さ1mm)を保証する。
電極のバリが長すぎるとショートの原因になるため、切断・巻回・積層工法における電極の精度・バリをコントロールする。また電池セルの耐電圧および電池モジュールの内部抵抗・開放電圧を計測する能力、正極材・負極材の不純物管理や電解液の注液環境を備える。
2.電池の「質」の引き上げ
2つ目は、電池の「質」の引き上げ。同規定では消費型電池、駆動型電池、蓄電池の3分野に分類され、車載向け大型駆動電池の性能に求める技術水準はすでに2021年版から引き上げられている。
エネルギー密度の要件をみると、三元系電池では、セルとモジュールがそれぞれ9.5%増の230Wh/kg、10%増の165Wh/kgに引き上げられ、リン酸鉄系では、セルとモジュールがそれぞれ3.1%増の165Wh/kg、4.3%増の12Wh/kgに引き上げられた。
3.電池材料技術の向上
3つ目は、電池材料技術の向上。材料生産において単位質量当たりで取り出せるエネルギー量を表す電流容量が規定されている。正極材では、三元系とリン酸鉄系がそれぞれ155mAh/g、180mAh/gに達し、負極材では、炭素とシリコン炭素がそれぞれ340mAh/g、480mAh/gに達する。
またセパレーターの突き刺し強度では、電池内部に異物が混入しても破れない性能が求められ、湿式法と乾式法がそれぞれ0.204N/μm、0.133N/μmに達する必要がある。電解液生産で使用されるフッ化水素など分量も要求される。