「ホンダ」希望退職、「日産」工場閉鎖…中国市場で“総崩れ”の日本車メーカー。最後の砦「トヨタ」も例外ではない苦境

「ホンダ」希望退職、「日産」工場閉鎖…中国市場で“総崩れ”の日本車メーカー。最後の砦「トヨタ」も例外ではない苦境
(※写真はイメージです/PIXTA)

かつて高品質と低燃費を武器に中国市場を席巻した日本車が、今、深刻な転換期を迎えている。BYDなど現地メーカーのNEV攻勢の前にシェアは急落。ホンダは希望退職に踏み切り、日産は工場を閉鎖。最後の砦と見られたトヨタでさえ、ブランド力の低下が囁かれる。湯進氏の著書『2040中国自動車が世界を席巻する日』(日本経済新聞出版)より、中国市場における日本の自動車メーカー各社の戦略と課題を分析していく。

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日本車、光と影の中国市場20年

日本の自動車メーカーは、1980年代に地場企業に対する技術供与の形で中国事業をスタートし、1993年から2004年の間に、スズキ、ホンダ、トヨタ、日産、マツダがそれぞれ乗用車合弁企業を立ち上げ、本格的中国展開をスタートした。

 

2012年には長安マツダ(マツダと長安汽車の合弁)、広汽三菱(三菱自動車と広州汽車の合弁)に加え、日本の自動車メーカー6社が乗用車合弁計10社を展開するようになった【図表1】。

 

出所:各社発表より筆者作成
[図表1]中国における日系乗用車合弁企業の概要 出所:各社発表より筆者作成

 

2008年、日本車は高品質、低燃費などの特長を武器に強い競争力をつけ、31%の市場シェアで先発組のドイツ勢を抑えて、最大の勢力となった。

 

リーマン・ショック以降、中国政府が実施した小型車減税策に応じて、欧米系各社はいち早くモデルチェンジや新車種の投入を行っていたのに対し、日系各社は、市場戦略の転換が遅れた。当時、欧米系メーカーに比べて日系企業の事業基盤は弱く、2012年に発生した「尖閣諸島問題」の影響を受け、日本勢は積極的なマーケティング施策を展開しにくい面もあった。そして2012年、ドイツ系企業に販売台数で抜かれて以降、日系企業は首位奪還には至っていない。

 

2015年以降、中間所得層の広がりやクルマ消費の高度化に伴い、日系各社は中国で新車投入や中国専用車の開発などを通して、消費者ニーズにきめ細かく対応するマーケット戦略を打ち出し、着実に製品競争力を高めてきた。これまでの車種別プラットフォーム生産から、車種の枠組みを超えた大規模な部品共通化戦略や兄弟車戦略による生産へ切り替える一方、日本企業が得意とするHVが中国で強い競争力をみせており、独占状況が続いている。

 

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次ページ「高品質・低燃費」は過去の栄光。中国NEVに呑まれ…

※本連載は、湯 進氏による著書『2040 中国自動車が世界を席巻する日』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

2040 中国自動車が世界を席巻する日

2040 中国自動車が世界を席巻する日

湯 進

日本経済新聞出版

BYDの実力、群雄割拠の各社の戦略、CATLが見ている未来……。 知能化でどう変わるのか、産業政策の実態は、日本企業は2040年の市場で勝てるのか――。電動化を追い風に爆発的に成長した中国自動車産業。本書は、成長を生み…

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