トヨタを猛追するBYD、2030年には販売台数「1000万台」で並ぶ?…日本の“絶対王者”が揺らぐ可能性

トヨタを猛追するBYD、2030年には販売台数「1000万台」で並ぶ?…日本の“絶対王者”が揺らぐ可能性
(※写真はイメージです/PIXTA)

2003年に自動車産業に参入した、BYD。2003年の参入から20年あまり、いまや世界市場でトヨタと肩を並べる存在へと急成長している。技術もさることながら、各国の市場を緻密に分析し、かつての先達と互角に戦えるほど急成長を遂げた。本稿では、湯進氏の著書『2040中国自動車が世界を席巻する日』(日本経済新聞出版)より、BYDのグローバル戦略を読み解く。

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「パクリ」から始まり…トヨタを追う、BYD20年の歩み

かつて「トヨタ車のパクリ」と揶揄されたこともあるBYDだが、日米欧メーカーに学びながら技術やデザインを磨いてきた。特にトヨタを研究し、数十年にわたり多くを見習っている。

 

自動織機でのノウハウをもとに自動車開発を始めたトヨタは、機械工学技術を内燃機関車で活用する歩みを研究し、「トヨタ生産方式」と呼ばれる手法で、改善と無駄の排除、サプライチェーン管理を組み合わせて、自動車製造を極めた最高峰に到達した。

 

BYDは、電池技術を活用する新エネルギー車において、ランプ、シートから電池、半導体に至るまで、部品を自社生産する垂直統合戦略で、トヨタと同様に、効率性を追求しコストダウンと効率性の向上につなげた。

 

BYDはトヨタと同様、自社の強みを言い立てることなく、淡々と結果を出すタイプである。両社とも国内で技術を磨き、海外に進出する際は、その市場があまり発展していない国から手をつけた。

 

トヨタ車の輸出台数は1955~61年の7年間で40倍以上に増えた後、増加の一途をたどった。BYDの輸出台数は2021年の2万台から2025年の約100万台へと急増する見込みだ。海外進出・サプライチェーン・販売網の構築などトヨタの海外展開も、BYDの研究対象である。

ともに2003年参入のテスラは「棲み分け」から「競合」へ変化

BYDとテスラは、ともに2003年に自動車産業に参入して以来、急成長を遂げてきた。ハイエンド車から参入したテスラとは真逆に、BYDは大衆車マーケットをターゲットとする中価格ブランドを中心に展開している。

 

BYDはテスラのEV「モデルS」の構造を徹底的に分析し、熱マネジメントシステム「オクトバルブ」、自動運転向けハードウエア「HW」、一体成型技術「ギガキャスト」も研究し、消費者ニーズに合わせた商品開発や技術の改良に取り組んでいる。電池などコア部品をEVに特化して一貫して生産するビジネスモデルはテスラとも重なるが、両社の製品はかつての棲み分けから競合となっている。

 

わずか3年で累計生産台数1000万台に到達…驚異の「BYDスピード」

BYDのNEVの累計生産台数は、2024年11月に世界初の1000万台に到達した。生産台数100万台から600万台までの所要年数は2年、600万台から1000万台まではわずか1年と、「BYDスピード」をPRした。

 

ただ、最初の100万台を生産するのに、テスラは12年、BYDは13年、両社ともに長い年月を要した。

 

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※本連載は、湯 進氏による著書『2040 中国自動車が世界を席巻する日』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

2040 中国自動車が世界を席巻する日

2040 中国自動車が世界を席巻する日

湯 進

日本経済新聞出版

BYDの実力、群雄割拠の各社の戦略、CATLが見ている未来……。 知能化でどう変わるのか、産業政策の実態は、日本企業は2040年の市場で勝てるのか――。電動化を追い風に爆発的に成長した中国自動車産業。本書は、成長を生み…

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