「ホンダ」希望退職、「日産」工場閉鎖…中国市場で“総崩れ”の日本車メーカー。最後の砦「トヨタ」も例外ではない苦境

「ホンダ」希望退職、「日産」工場閉鎖…中国市場で“総崩れ”の日本車メーカー。最後の砦「トヨタ」も例外ではない苦境
(※写真はイメージです/PIXTA)

かつて高品質と低燃費を武器に中国市場を席巻した日本車が、今、深刻な転換期を迎えている。BYDなど現地メーカーのNEV攻勢の前にシェアは急落。ホンダは希望退職に踏み切り、日産は工場を閉鎖。最後の砦と見られたトヨタでさえ、ブランド力の低下が囁かれる。湯進氏の著書『2040中国自動車が世界を席巻する日』(日本経済新聞出版)より、中国市場における日本の自動車メーカー各社の戦略と課題を分析していく。

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シルフィ・セダンに過大依存、ゴーン時代にブランド力低下…底入れが見えない「日産」

日産は1993年に河南省鄭州市で小型ピックアップ車を中心とする商用車の合弁事業を開始し、2003年には東風汽車と合弁で東風汽車有限公司を設立し、本格的に乗用車事業を開始した。2024年の販売台数は前年比12.2%減の69.6万台となり(ピークの2018年比55%減)、6年連続での前年割れとなった。

 

課題の一つは、大衆向けセダンのシルフィに過大依存し、有力車種が少ないことである。シルフィは、2018~21年に中国乗用車市場のトップモデルとなり、2024年の販売台数は34万台に達して、日系車の首位を維持している。それに伴って、日産の中国販売台数に占めるシルフィの割合は、2018年の30%から2024年は49%へと上昇した。

 

一方、中国の新車販売台数ランキングでは、2022年からBYDの王朝シリーズ「宋」に抜かれ、2024年には第5位に転落した。しかし、日産はシルフィのほかに人気モデルを生み出せていない。2番手モデル不在、といえるのである。また廉価帯の中国専用ブランド「ヴェヌーシア(啓辰)」の低迷が響いているなか、販売台数の底入れは見えない状況だ。

 

「カルロス・ゴーン時代」は、中国市場を強化する方針を掲げ、販売台数の目標を優先した。その結果、値引き販売が行われることになり、ブランド力の低下を招いたともいえる。こうした方針が、中国事業全体にも大きく影響を与えている。

 

コロナ禍以降、ファーストカーを買おうとしていた消費者の収入が減り、買い替え検討者のクルマ選びは、安全性や信頼性を重視する傾向にあり、新車需要も廉価車から中高級車へシフトしつつある。だが、地場ブランドのコストパフォーマンスに及ばないなか、ファーストカー需要を狙うシルフィのさらなる値下げは現実的ではない。

 

2024年には、年産能力13万台の常州工場を閉鎖したが、中国での生産能力を最大3割減らす計画もある。稼働率の低迷が深刻化しているなか、生産能力適正化やリストラ対策は避けられない。

 

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※本連載は、湯 進氏による著書『2040 中国自動車が世界を席巻する日』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

2040 中国自動車が世界を席巻する日

2040 中国自動車が世界を席巻する日

湯 進

日本経済新聞出版

BYDの実力、群雄割拠の各社の戦略、CATLが見ている未来……。 知能化でどう変わるのか、産業政策の実態は、日本企業は2040年の市場で勝てるのか――。電動化を追い風に爆発的に成長した中国自動車産業。本書は、成長を生み…

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