トヨタを猛追するBYD、2030年には販売台数「1000万台」で並ぶ?…日本の“絶対王者”が揺らぐ可能性

トヨタを猛追するBYD、2030年には販売台数「1000万台」で並ぶ?…日本の“絶対王者”が揺らぐ可能性
(※写真はイメージです/PIXTA)

2003年に自動車産業に参入した、BYD。2003年の参入から20年あまり、いまや世界市場でトヨタと肩を並べる存在へと急成長している。技術もさることながら、各国の市場を緻密に分析し、かつての先達と互角に戦えるほど急成長を遂げた。本稿では、湯進氏の著書『2040中国自動車が世界を席巻する日』(日本経済新聞出版)より、BYDのグローバル戦略を読み解く。

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「安さ」から「ハイコスパ」へ…難所EU市場も“作戦勝ち”

BYDは1998年に初の海外拠点をオランダに設立し、欧州向け輸出を開始した。1999年には米国で電池と電子部品事業を開始した。

 

当時、李柯執行副総裁は責任者として、王氏と二人三脚でグローバル展開を模索していた。欧米市場で人材の確保、ロビー活動、商習慣の習得など事業のノウハウを蓄積し、2013年から米国カリフォルニア州ロングビーチ向けの電気バスの供給をはじめ、路線バスやタクシーなどB2B事業を中心にグローバルで電動車の輸出を開始した。

 

BYDは、商用車のほか、リチウムイオン電池、電子部品、スマホも製造している。こうした海外事業は乗用車の海外展開の足がかりになる。2021年には「乗用車海外戦略」を打ち出し、サプライチェーンの競争力を生かし、コストパフォーマンスで世界競争に攻勢を仕掛ける一方、各国の優遇政策に対応し、海外生産にも積極的に取り組んでいる。

 

中国国内より海外ビジネスの利益率が高いため、BYDは積極的に各国政府や地場企業と提携し、販売ネットワークの拡大やブランド力の向上を図っている。

 

購買力と消費志向や、政府補助金などマーケットを細分化しながら、世界戦略車の「ATTO3」、「シール」「ドルフィン」「シーライオン」など海洋シリーズの人気モデルを投入し、異なるユーザー層に対応した海外戦略をとっている。

 

現地ブランドが強いEU市場には、“高品質×高級感”で突破

ASEAN、中南米、中東、アフリカなど、現地のブランドが弱い市場に率先して進出し、コストパフォーマンスの良い中低価格車を投入している。

 

一方、購買力の高いEU市場は、ドイツやフランスブランドが圧倒的に強いため、中国ブランドが足場を築くのは容易ではない。

 

BYDは2021年に電動化で先行するノルウェーに進出し、2022年からハイエンド車を中心にEU各国への本格展開を開始した。またブランド認知度の向上を図るため、ユーロ2024の公式パートナーとなり、試合会場や公式ファンゾーンでモデル車の展示を通じて、現地消費者にアピールした。

 

BYDはこれまでEUの19カ国に進出し、250店舗以上を展開している。独メルセデス・ベンツと合弁で立ち上げたブランド「騰勢」も欧州市場に投入した。

 

BYD欧州事業の責任者、舒酉星氏は「優れた上質な装備を標準装備するとともに、欧州消費者が購入しやすい価格に設定した」と語った。

 

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※本連載は、湯 進氏による著書『2040 中国自動車が世界を席巻する日』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

2040 中国自動車が世界を席巻する日

2040 中国自動車が世界を席巻する日

湯 進

日本経済新聞出版

BYDの実力、群雄割拠の各社の戦略、CATLが見ている未来……。 知能化でどう変わるのか、産業政策の実態は、日本企業は2040年の市場で勝てるのか――。電動化を追い風に爆発的に成長した中国自動車産業。本書は、成長を生み…

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