トヨタを猛追するBYD、2030年には販売台数「1000万台」で並ぶ?…日本の“絶対王者”が揺らぐ可能性

トヨタを猛追するBYD、2030年には販売台数「1000万台」で並ぶ?…日本の“絶対王者”が揺らぐ可能性
(※写真はイメージです/PIXTA)

2003年に自動車産業に参入した、BYD。2003年の参入から20年あまり、いまや世界市場でトヨタと肩を並べる存在へと急成長している。技術もさることながら、各国の市場を緻密に分析し、かつての先達と互角に戦えるほど急成長を遂げた。本稿では、湯進氏の著書『2040中国自動車が世界を席巻する日』(日本経済新聞出版)より、BYDのグローバル戦略を読み解く。

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会長が掲げる世界販売台数「1000万台」も夢ではない

中国の新車市場で価格競争が繰り広げられているなか、EVメーカーの淘汰は2025年からさらに加速する見通しだ。消耗戦に耐えられ、かつ持続的革新に取り組むメーカーだけが真の強者となりうる。

 

BYDの王会長が社内で中長期的な世界販売目標を1000万台に設定し、そのうち、海外販売台数は500万台を目指していると、BYD幹部から聞いた。

 

その大胆な成長目標は達成できるのだろうか。国内販売台数と海外販売台数の伸び率を用いて、2030年のBYDの販売台数を予測してみる。

 

2024年の新車販売(商用車を含む)は427万台で、前年比成長率は41%増、そのうち、385万台を自国内で販売するが、輸出も約42万台と10%近い。中国の国内販売では2025~27年に年間平均12%増、2028~30年に年間平均2%増のペースで計算すると、2030年には約580万台となる。

 

海外販売では2025~27年に年間平均72%増、2028~30年に年間平均28%増のペースで計算すると、2030年には約400万台となる。

 

すなわち、2030年にBYDの世界販売台数は1000万台の大台に近づくと見込まれる【図表2】。

 

出所:公開資料より筆者作成 注:2025年以降は筆者予測(2024年の実績と今後の生産能力をベースとする推算)
[図表2]BYDの販売台数 出所:公開資料より筆者作成
注:2025年以降は筆者予測(2024年の実績と今後の生産能力をベースとする推算)

 

2025年3月時点で、BYDは中国国内に11の乗用車生産拠点を持ち、海外に8拠点を展開し、NEV年産能力は2025年末に550万台に達し、2027年には800万台(海外を含む)を超える見込みだ【図表3】。

 

出所:公開資料より筆者作成
[図表3]BYDの自動車生産能力(2024年末) 出所:公開資料より筆者作成

 

新工場の建設期間が国内で約12カ月、海外で約24カ月というBYDスピードで、今後生産拠点の新設や能力増強に取り組む。国内市場で着実にシェアを拡大する一方、輸出や海外生産も活発化するなか、2030年にはBYDとトヨタの販売台数は互角になる可能性がある。

 

 

湯 進

みずほ銀行

ビジネスソリューション部 上席主任研究員

 

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※本連載は、湯 進氏による著書『2040 中国自動車が世界を席巻する日』(日本経済新聞出版)より一部を抜粋・再編集したものです。

2040 中国自動車が世界を席巻する日

2040 中国自動車が世界を席巻する日

湯 進

日本経済新聞出版

BYDの実力、群雄割拠の各社の戦略、CATLが見ている未来……。 知能化でどう変わるのか、産業政策の実態は、日本企業は2040年の市場で勝てるのか――。電動化を追い風に爆発的に成長した中国自動車産業。本書は、成長を生み…

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