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顧客の一言から見つかった、自社製品に眠る「100倍の可能性」
その翌日。小杉は『影武者』のユーザーから届いた要望への対応で悩んでいた。
(これって、どうすればいいんだろう?)
届いたのは、こんな内容だった。
『影武者』への機能追加はまず小杉が判断した上で、必要と判断したら反町が対応を検討することで反町と合意していた。しかし、技術的な知識がない小杉には、要望への対応が判断できなかった。
(困っているのはよくわかる。でもこの要望、そもそも『影武者』で対応できるの? 対応できたとして、そもそもウチでやるべきなのか?)
色々と悩んだ末に、まず反町に相談しようと考えた。
(反町さんは気難しいけど、他に相談する人もいないからなぁ)
勇気を出して、反町にメッセージを送った。
すぐに反町の返事が届いた。
反町の返事を見て、小杉は再び考え込んだ。
(なるほど。『影武者』はクラウド以外に個人のスマホも管理できるのか。あれ? ってことは、情シス担当者が管理するパソコンとかサーバーとか、他のモノも管理できるってことか?)
しかし、いくら考えても自分ではわからない。小杉は反町に再び尋ねた。
すぐに返事が戻ってきたが、小杉はまだイメージが湧かない。また反町に質問した。
質問を送ってから(これって、お客さんの状況を把握しなきゃいけないボクが知ってるべきことで、開発をお願いする反町さんに聞く話じゃないかも……)と気が付いたが、反町は丁寧に返事をしてきた。
返事を見て、小杉はまた考えた。
(情シスが管理するすべてのモノを『影武者』で把握できれば、『ひとり情シス』の色々な仕事が効率化できそうだな。でも、お客さんの細かい要望をすべて聞いてその機能を全部開発する余力なんてウチにはないぞ。どうすればいいんだろう?)
小杉はまたもや考え込んでしまった。小杉は反町にメッセージを送った。
小杉の返事を見て、自宅でリモートワークしていた反町はつぶやいた。
(小杉さんって、本当に真面目にお客さんへ対応してるなぁ。ウチの会社にもまだこんな人が残っていたんだな)
ライバルを“営業マン”に変える「API公開」という逆転の発想
「……ってことなんだけど、何かアイデアある?」
翌日、さっそく小杉が日吉チームの打合せで相談すると、日吉がうれしそうに言った。
「なんか小杉クン、反町さんといい感じでやってるみたいね!」
小杉は(そもそもそれって、日吉がボクに無茶振りしたからだろ)という言葉をかろうじて飲み込んで、話を続けた。
「解決できる仕組みがありそうな気がするんだけど、どうしても思いつかない……」
話を聞いて考えていたマルクスが「そう言えば……」と声をあげた。
「この前、確か『影武者』を『ヤマクラフォーキャスト』から使う仕組みをバリューマックスに提供する、って言っていましたネ?」
「タクシーアプリGOからグーグルマップの地図機能を使わせるのと同じ方法を『影武者』に組み込んで提供するって話だよね。APIっていう仕組みだよ」
「この仕組みは、今はバリューマックス1社限定で提供してマス。これを一般公開して、どのアプリからでも『影武者』を使えるようにしたら、どうデスカ?」
日吉は首を傾げて「それをやると、何がいいの?」と尋ねた。
「他社が自分たちのアプリで『影武者』を使って、代わりに売ってくれマス」
「なんかそれ、すごくムシのいい話じゃないの? 他社が『影武者』を使ってくれる理由なんて、あるのかしら?」
「たとえば、『パソコン不具合の問合せ』のアプリを提供している他社は、自社のアプリから『影武者』を呼び出すだけで、問い合わせてきた社員の詳細なパソコンの設定情報を、簡単に自社アプリの画面上に表示できマス。GOがグーグルマップを呼び出して、地図を表示するのと同じ方法デス」
小杉が「なるほど!」と声をあげた。
「そもそも情シスの仕事は、情シスが管理するすべてのモノを正常に動かし続けることだよね。『影武者』は、情シスが管理するすべてのモノの状態がすぐにわかる。つまり、他社が自分たちのアプリで『影武者』を使えば、『ひとり情シス』が抱える問題を今よりもずっと楽に解決できるってことか!」
「イエース。ただし、ボクたちがどこで稼ぐか考えておくことも大事デス。『影武者』を使った分のお金をどこからもらうかを、事前に考えておく必要がありマス。グーグルマップのやり方が参考になるはずデス」
小杉は「なるほど、グーグルマップね」と言ってネットを検索して、答えた。
「グーグルマップは、アプリを開発した会社から、グーグルマップを使った分だけの使用料金を取っている。つまり『従量制課金』だね」
「ワンダフル! ボクたちも、他社ITサービス企業が自分たちのアプリでどれだけ『影武者』を使ったかで、課金すればいいと思いマス」
「いいね! これまで他社ITサービス企業はライバルだったけど、これができれば彼らは『ひとり情シス』が抱える問題を一緒に解決するパートナーになる」
「そうデス。彼らと一緒に、巨人トライアンフの『鬼武者』を倒すんデス」
しかし、日吉はまだ納得せずに、首を傾げたままである。
「でも、他社のITサービス会社に『影武者』を売り込むのって、難しくない?」
