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「ドーナツ戦争」で大手コンビニに勝利したミスタードーナツ
「でもそれで、圧倒的に強い強者に本当に勝てるのかなぁ」早々に牛丼を食べ終えた小杉が尋ねると、マルクスが答えた。
「ドーナツ専業のミスタードーナツ(ミスド)も、規模が50倍大きい大手コンビニ3社と戦いマシタ。2014年、セブンはミスドの全社売上よりも大きなドーナツでの売上目標を立てて、全店舗でドーナツを売り始めマシタ。『コンビニコーヒーとドーナツは相性がいいから、併せ買いが狙える』と考えて、本気でドーナツ市場を獲りに来たんデス。ローソンとファミマも追従して『ドーナツ戦争』が始まりマシタ。大手コンビニ3社の店舗数はミスドの50倍デス。多くの人が『ミスドはヤバい』と思いマシタ」
日吉が「あれ?」と言って尋ねた「ミスドって、残っているわよね。ウチの近所にもあるわよ」。
「ミスドは2年半戦い抜いて、勝ち残りマシタ。ドーナツ専業のミスドと比べてコンビニドーナツが美味しくなかったからデス。コンビニ店員はドーナツだけを売るわけではなくて、やることがたくさんありマス。一方でミスドは、人気スイーツ・クリームブリュレの味をドーナツで再現した『クリームブリュレドーナツ』など、店舗キッチンで丁寧に仕上げたドーナツを次々に投入して差別化しマシタ」
「なるほどね。確かに私も、食べるんだったら美味しいミスドのドーナツを選ぶわ」
「激しい競争でミスドは売上の1/4を失いマシタ。でも、逆にムダが削げてスリム化できマシタ。そして、2020年のコロナ禍のテイクアウト需要で復活し、1店舗当たりの売上は2017年から2022年の5年間で1.5倍に増えたんデス」
小杉が納得した「得意な美味しいドーナツを磨き上げて、50倍の敵にも負けなかったのか……」。
圧倒的な強者にも必ず弱点がある…キーとなる「チャネル戦略」
「圧倒的な強者にも必ず弱点がありマス。コンビニの弱点は、すべてに対応しなければいけないことデス。そこで弱者は自分の強みをとがらせて、強者の弱点を突くんデス。ただ、セブンも負けたままではありマセン。2024年9月、首都圏5000店舗で新たに改良したドーナツを販売し始めマシタ。王者セブンは弱者のよい点と自分の失敗から貪欲に学び続けて、徹底して強者の戦略を進めていマス」
すると日吉が尋ねた。
「私たちがトライアンフと戦うには、どう考えればいいの?」
マルクスはしばし考えて、答えた。
「4P(※)の一つ『チャネル戦略』がキーになると思いマス。強者トライアンフは『影武者』と同じ商品『鬼武者』を持ってマス。だから製品戦略や価格戦略では勝てマセン。違いを出すには、チャネル戦略でトライアンフができない売り方を考えるべきデス。チャネル戦略なら、勝てる方法があるはずデス。チャネル戦略で大事なのは、『顧客ニーズ』を起点に『誰がどうやってお客に価値を届けるか』を考え続けることデス」
日吉は「つまり、売り方ってことなのね……」と考え込んだ。

