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登場人物紹介
日吉 慶子(ひよし・けいこ)
本作の主人公。中小IT企業「UDサービス」の若手社員。「会社を世界一にする」という情熱(アニマルスピリット)を持つが、空回りしがち。
マルクス・ハマー
日吉の部下となる米国人のマーケティング専門家。「マーケティング界のロックスター」の異名を持つ。日本のビジネスを研究するために来日。
小杉 武蔵(こすぎ・むさし)
日吉と同期入社の同僚。内向的な性格で、情熱的で突っ走りがちな日吉に振り回されながらも、冷静な視点でチームを支える。
商談成功の先に立ちはだかった「価格設定」の壁
珍しく緊張して歩いていた日吉慶子は、バリューマックス社のオフィスを出てホッと息をついた。
(宮前さんって、オーラがあるなぁ)
ちょうど得意先のIT企業・バリューマックスで副社長を務める宮前久美(みやまえ・くみ)との商談を終えたところだった。宮前は数多くの斬新な製品やサービスを企画・開発して大ヒットさせたIT業界のトップ経営者であり、日吉が尊敬する人物の1人である。
日吉が宮前に『影武者』を説明すると、宮前は即断即決だった。
「『影武者』いいわね! 導入するわ。井上クンとロンロン、すぐに進めて。で、おいくらなの?」
(そう言えば、価格は考えてなかったな……)
オフィスに戻った日吉は、マルクスと小杉に経緯を説明した「バリューマックスはすぐ買うわ。価格を決めなきゃ。新商品は高いとお客は買わないから、安くしなくちゃね」。
するとマルクスの顔が徐々に険しくなって紅潮してきた。
「なぜ日本人は安くしたがるんデスカ! 価格を思い付きで決めてはダメデス!」
頭をブンブン振って普段以上に大声をあげるので、日吉は慌てた。
「わ、わかったから。何が問題なの?」
「価格戦略が利益を生むからデス」
日吉は目が点である。
たった1%の値引きで、利益は10%下がる
「サッパリ意味がわかりません」
「たとえば定価100円、コスト90円の商品を定価で1万個売ると、売上と利益はどうなりマスカ?」
マルクスの問いに、小杉が答えた「売上は1万個×100円だから、100万円だよね。コストは1万個×90円だから、90万円だ。利益は売上からコストを引くから、10万円だね」。
「では1%値引きして販売数が同じだと、どうデスカ?」
「売上は99万円。コストは変わらず90万円だから、利益は差し引きで9万円だ」
「たった1%の値引きで、利益は10万円から9万円、つまり10%も下がりマス!」
「本当だ! もし10%の値引きだと……。売上90万円だから、利益ゼロ!」

