「146円台」は、ヘッジファンドの「サポートライン」か
先週は、先述のベッセント発言などの影響で米ドル/円は前週の安値を割り込み、一時146円台前半まで下落する場面もありましたが、この水準のなかでは“下げ渋る”ところとなりました。これには、テクニカルな要因が大きかったとみられています。1ドル=146円という水準は、テクニカル分析の観点から重要な「サポートライン」である可能性があります。
また、このサポートラインは、ヘッジファンドが保有する円買いポジションの損益分岐点となっている可能性もあります。
ヘッジファンドの取引を反映しているCFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円買いポジションは、4月末に買い越し(米ドル売り越し)がそれまでの最高を大きく更新し、17万枚以上に拡大しました。
この過去に例を見ない規模の円買いポジションは、損益分岐点のおおよその目安が120日移動平均線(MA)付近にあるとみられており、現在の水準ではちょうど146円前後に位置しています(図表4参照)。
つまり、146円程度の120日MAより米ドル高・円安で推移しているなかでは、ヘッジファンドの円買いポジションは含み損になっている可能性があるため、損失拡大を回避するため円買いポジションの処分による円売りが発生しやすいと考えられます。
つまり、現在の為替相場が146円程度の120日MAを上回って(米ドル高・円安で)推移している状況では、ヘッジファンドの円買いポジションは含み損を抱えている可能性があります。そのため、損失の拡大を回避するために円買いポジションを処分し、円売りを行う動きが発生しやすいと考えられます。
CFTC統計の投機筋の円買い越しは、8月12日時点で7.4万枚となり、ピークから10万枚程度も縮小しました(図表5参照)。この円買いポジションの処分にともなう円売りが、146円台で米ドル/円が下げ渋っている一因の可能性があります。
ただ、逆にいえば120日MAの146円より米ドル安・円高となり、円買いポジションが含み益に転換すると、ポジションの処分による円売りが減り、逆に再び円買いポジション拡大に動く可能性もあります。


