米雇用統計の結果を受けて、米経済の“評価”を問い直す
ところが、この7月の米ドル高・円安は、8月に入って一転して147円台まで急落しています。その大きなきっかけとなったのが、1日に発表された米雇用統計です。
このなかで、7月分のNFP(非農業部門雇用者数)が予想より弱かったことに加え、それ以前の2ヵ月分が大幅に下方修正されたことで、“予想以上に強い米労働市場”といった見方が一変するところとなったわけです(図表6参照)。
そもそも、4月の139円から7月の150円まで米ドル高・円安に戻した大きな背景は、この労働市場を含めた米経済の予想以上の強さということがあったと思います。米実質GDP伸び率は、2025年の第1四半期こそ前期比年率でマイナスとなりましたが、第2四半期の速報値は3%の高い数値となりました。
一時は、トランプ大統領の関税政策などの影響で、「インフレが再燃するなか米景気は減速する」「最悪の場合、物価高と景気後退が同時に起こる『スタグフレーション』に陥るリスクさえある」とみられていました。しかし、それらが実際の数値で確認されないまま、株価はむしろ最高値を更新しました。
1日発表の米雇用統計をきっかけに、こうした“予想以上に強い”という米経済への評価が正しかったのか、改めて問い直す状況となっています。
したがって、8月の米ドル/円は、米経済の見極めが最大のテーマとなるでしょう。労働市場を含む米経済が早期の利下げ再開が必要なほど悪化してきたということになれば、株安や米金利低下を受けて米ドルの上値も重くなるのではないでしょうか。
もう1つの目安として、足下146円台前半で推移している120日MAより米ドル安・円高に戻るかに注目したいと思います。これはヘッジファンドの円買いポジションの損益分岐点とみられていますから、これより米ドル安・円高に戻れば、円買いポジションの手じまいに伴う円売りは鈍くなる可能性があります。
以上を踏まえ、8月の米ドル/円予想レンジは143~150円と、7月とは逆に米ドル安・円高へ戻る展開を予想します。
今週の予想レンジは「145~150円」
1日の米雇用統計の結果を受けて、米景気の評価を見直す必要があるかがテーマとして浮上してきたことから、5日のISM(米供給管理協会)非製造業景気指数や雇用関連の指標を中心に米経済指標発表が注目されることになりそうです。
米ドル/円は1日に150円台から147円台まで3円以上もの急落となったことで、目先は反発も限られるのではないでしょうか。
一方の下値は、120日MAの146円台前半を割れるかに注目します。120日MA以上で推移するなかでは、ヘッジファンドの円買いのポジションの手じまいの円売りによって米ドル/円の下値も限られそうです。
しかし、これが割れてくると、下落リスクが拡大することで、米ドル高・円安も仕掛けにくくなるのではないでしょうか。
以上を踏まえ、今週の米ドル/円は「145~150円」と予想します。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。
注目のセミナー情報
【海外不動産】12月18日(木)開催
【モンゴル不動産セミナー】
坪単価70万円は東南アジアの半額!!
世界屈指レアアース産出国の都心で600万円台から購入可能な新築マンション
【事業投資】12月20日(土)開催
東京・門前仲町、誰もが知る「超大手ホテルグループ」1階に出店!
飲食店の「プチオーナー」になる…初心者も参加可能な、飲食店経営ビジネスの新しいカタチとは?
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

