テレビアニメ化から30年で6.6兆円を稼ぎ出した「アンパンマン」…アメコミヒーローを超えた「最強のマン」と言えるワケ

テレビアニメ化から30年で6.6兆円を稼ぎ出した「アンパンマン」…アメコミヒーローを超えた「最強のマン」と言えるワケ
(※画像はイメージです/PIXTA)

世界6位のキャラクタービジネスとして、米国のスーパーヒーローたちをも凌駕している「アンパンマン」。乳幼児がターゲットのキャラクターが、なぜここまでの経済圏を築けたのでしょうか? 本記事では、柳瀬博一氏の著書『アンパンマンと日本人』(新潮社)から一部を抜粋し、解説します。

学生の87%がアンパンマン消費者

現代の大学生は、アンパンマンとどのように出会ったのか? 私が教鞭をとる東京科学大学で学生たちに聞いてみることにしました。


2024年、「メディア論」を受講した主に1~2年生273人に聞きました。男女比率は85:15。2004~06年生まれが中心で、アンケートを行ったときは18~21歳です。


問1「アンパンマンの消費者でしたか?」


イエスが87.2%です。さらにそのうち82%がアンパンマンがプリントされたお菓子を買ってもらい、44.5%が絵本・童話の読者でした。


問2「いつからアンパンマンと遊び始めましたか?」


一番多かったのが1歳代のときで32%。次が0歳代、2歳代で20.1%。4番目が3歳代で
18.5%です。

 

問3「いつごろアンパンマンから卒業しましたか?」


6歳が首位で23.3%。2位は5歳で20.8%、3位は小学校低学年7~8歳で15.7%。4位が4歳で13%でした。


学生たちは、2000年代半ばから後半にアンパンマンの消費者となっています。バンダイの調査では、アンパンマンが日本の子どもたちのナンバーワンキャラクターになった時の当事者です。9割近くがアンパンマンの消費者で、テレビアニメも73%が視聴していた。バンダイの調査結果と東京科学大学の学生たちの答えはほぼ同一傾向です。


また、アンパンマンに触れ始めた年代が0歳から2歳のときが多く、アンパンマンを卒業したのは4~6歳の幼稚園時代が多い。アンパンマンのお客さんは1~5歳が大半で2~3歳が中心、幼稚園に入ると徐々に卒業するというバンダイのアンケート結果とも合致します。

 

進化生物学者であり、環境教育にも造詣の深い慶應義塾大学名誉教授の岸由二氏は、人間=ホモ・サピエンスの子どもの成長過程には、もともと備わった学習プロセスがある、と語っています。


ヒトという生きものの幼獣=赤ちゃん・幼児・少年少女は、成長に伴って段階的に、保護者への愛着に始まり、言語を習得し、友だちをつくり、敵味方を区別するようになり、生きものへの興味を抱き、道具や火を使うようになり、秘密基地を設け、狩猟採集活動をし、冒険に出かける。世界中どこでも子どもはこうしたプロセスを踏んで成長する、というのです。


岸氏の説に従えば、子どもが最初に「入学」するのが、まんまる顔のアンパンマンとその仲間の世界です。アンパンマンの世界は3頭身。大きくて丸い顔があらゆるキャラクターに共通しています。実はこれ、赤ちゃんから3~4歳くらいまでの乳幼児の視覚世界のイメージそのものです。

 

幼稚園入園前の幼児に、お父さんお母さんや友だちの絵を描かせると、ほとんどの場合、大きく顔を描き、その顔から手足が直接出ています。家よりもお父さんやお母さんの顔のほうが大きい絵を描いたりしますが、あの絵は、そのまま幼児に見えている世界なのです。


アンパンマンのデザインとキャラクター設定は、そんな幼児の“環世界”にぴったりフィットしているのです。お父さんお母さんをはじめ親しい人の顔を認識して、愛着を示す。乳幼児の世界は、まさにアンパンマンの世界と呼応します。

次ページ日本の乳幼児中心なのに世界6位

※本連載は柳瀬博一氏の著書『アンパンマンと日本人』(新潮社)より一部を抜粋・再編集したものです。

「マウント消費」の経済学

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勝木 健太

小学館

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