「子どもが泣き止む」だけじゃない…50代以上男性は知らない!? アンパンマンが〈日本の育児インフラ〉になったワケ

「子どもが泣き止む」だけじゃない…50代以上男性は知らない!? アンパンマンが〈日本の育児インフラ〉になったワケ
(※画像はイメージです/PIXTA)

病院で泣いていた子どもが、アンパンマンを見てぴたりと泣き止む。そんな光景が育児現場ではよく見られます。アンパンマンはただのキャラクターではなく、今や「育児インフラ」として多くの親たちに頼られています。本記事では、柳瀬博一氏の著書『アンパンマンと日本人』(新潮社)から一部を抜粋し、アンパンマンが育児現場で欠かせない存在となり、不動のヒーローとなった理由を解説します。

平成以降のヒーロー

アンパンマンを日本の赤ちゃんや幼児=乳幼児がどれだけ好きか。小児病院、保育園、幼稚園、託児所に行けば、すぐにわかります。


病院で大泣きしていた子が、アンパンマンの顔を見た瞬間、ぴたりと泣き止む。そのすきに、看護師さんがサッと注射を打つ。お医者さん、保育士さんなど乳幼児を扱うプロの方たちの多くが話します。


「アンパンマンにはいつも助けられています!」


いやいや、もっとお世話になっているのは私たち! 育児真っ最中の親御さんの多くがそう言います。


アンパンマンは日本の子育てに必須。乳幼児のいる家庭や乳幼児を扱う病院、保育園、幼稚園や各種小売業の世界では、もはや「常識中の常識」です。

 

一方、50代以上の男性の大半は、アンパンマンがここまで圧倒的に乳幼児に人気があることを案外知りません。


理由は2つあります。


1つは、アンパンマンは平成以降のヒーローだからです。


圧倒的に人気を集めるようになったのはアニメ放送が始まった1980年代終わりからで、国民的な存在になったのは21世紀になってから。このため、昭和の時代に子どもだった50代以上の世代はアンパンマンの圧倒的な人気ぶりを自分で体験していません。


もう1つは、50代以上の日本の男性の多くが、我が子の乳幼児時代の子育てに積極参加していなかったからです。そのため、アンパンマンが乳幼児にいかに愛されているか、子育ての現場でアンパンマンがいかに役立つか、実体験のある人が少ない。


昭和日本は、「働く夫と専業主婦」家庭が主流でした。厚生労働省のデータによれば、1980年の専業主婦世帯は1,114万世帯、共働き世帯614万世帯ですから専業主婦世帯が約2倍です。43年後の2023年になると、専業主婦世帯は517万世帯、共働き世帯は1,278万世帯ですから共働きが約2.5倍。完全に逆転しています。


1985年の男女雇用機会均等法の制定、1992年の育児休業法の施行などで共働きの流れが始まりますが、男女の育児休業取得率にはずっと大きな開きがありました。


女性の取得率は2007年以降80~90%なのに対し、男性は2016年まで3%を超えたことは一度もなかったのです。それが2020年のコロナ禍を機に12.65%と一気に増え、2023年は30.1%と過去最高を記録しています。以上の数字を見る限り、日本においては、コロナ禍まで男性の大半が乳幼児の子育てに積極参加していなかったと言えます。


共働きが一般化しつつあったけれども、男性が子育てに積極参加していなかった時代に、子育てを助けてくれる最高のヒーロー、それがアンパンマンとその仲間たちでした。だから、アンパンマンがいかに赤ちゃんや幼児の心を捉えるか、実体験で話してくれるのは、私の周りでも9割方は「お母さん」であり、男性で知っているのはお医者さんや看護師さん、保育園の保育士さんといった“プロ”に限られていました。


しかし、2020年代の今は違います。アンパンマンの消費の現場を歩くと、お母さんだけではなく、お父さんと一緒に子どもたちがアンパンマンを楽しむ姿は当たり前になりました。アンパンマンの消費スタイルの変化は、日本の子育ての変化を表象しています。

テレビアニメで大ブレイク

アンパンマンは、いつから日本の乳幼児の間で巨大な存在になったのか。

 

大ブレイクしたのはテレビアニメが放送開始してからです。1988年10月。日本テレビ系列でアニメ「それいけ!アンパンマン」の放送がスタートしました。翌89年からはアンパンマンの映画がコロナ禍の2020年を除き、毎年公開されるようになりました。

 

テレビも映画も大ヒットし、アンパンマンの認知度は一気に向上しました。それに伴い、アンパンマン関連のビジネスも急成長したのです。現在のアンパンマンの人気が始まったのは「1989年=平成の時代」から、というわけです。


昭和のアンパンマンの舞台は絵本が中心でした。原作者のやなせたかしが絵本『あんぱんまん』をフレーベル館から出版したのは1973年。1970年代終わりから徐々に絵本の世界で認知されるようになり、誕生から15年かかってようやくテレビアニメになったのです。

 

アンパンマンのお客さんは、絵本もアニメも、0歳から4、5歳までの乳幼児が中心です。中でも一人で歩けるようになってから幼稚園に上がるまでの1~3歳の支持率は極めて高いと言われています。

 

テレビ放送開始が1988年ですから、アンパンマンを乳幼児の頃から映像で鑑賞した最初の世代は、2025年現在40歳前後でしょう。今の20代から40歳前後の親と子どもはアンパンマンを二世代消費しているケースが多いはずです。

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※本連載は柳瀬博一氏の著書『アンパンマンと日本人』(新潮社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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