父親が亡くなった
森さん(55歳・男性)から相談がありました。父親が急逝し、実家は母親が1人暮らしになってしまったため、週の半分は実家で暮らしています。
姉がすぐ近くに住んでいるものの、姉は自分の子どもや夫の世話で忙しいという理由で、父親の介護もあまり協力はしてくれませんでした。父親が元気な頃でも厳格な父親と波長が合わないようで、あまり実家に寄り付かなかったのが実情です。
母親には強い
姉は父親には歯向かったりできずに従順な態度を取っていました。しかし、母親にはわがままを言うことが多く、父親が亡くなるとすぐに実家にやってきて、父親の預金通帳や母親の実印など重要書類はすべて自分が管理すると言い放ち、持ち帰ってしまったのです。
以前より姉の扱いには腫れ物に触るようにしてきた母親の弱みに付け込んだようで、姉の暴走は母親にも、森さんにも止められないといいます。
姉の目的は?
父親の相続税の申告も姉の知り合いから紹介された税理士に依頼をしてしまい、母親と森さんには説明もありません。
それだけならまだいいとして、森さんが困っているのは、姉が森さんの預金なども教えろと迫っていることです。
森さんは上場企業のサラリーマンとして勤続30年になります。しかも独身なので、姉とすれば森さんの財産も自分たち家族に影響してくると思っているのか、あるいは税理士にアドバイスされたのか、かなり高圧的に言ってくるというのです。
姉の質問に答えないといけないのでしょうか? と森さん。
きょうだいでも他人
今回の直近のテーマは父親の相続税の申告です。父親の財産を確認して、分け方を決めて、分割協議をして、相続税の申告・納税をすることが課題です。
ここに、将来の相続の対象である森さんの預金などは含まれません。まして姉に知らせる義務はないと言えます。
父親の財産
父親の財産は自宅3,900万円と預金6,000万円で1億円未満ですが、相続税の基礎控除を超えているため、相続税の申告はしないといけません。姉の考えでは自宅は母親が相続、預金は3等分にすればいいのでは? と思っているようです。
全部を母親が相続すれば納税は不要ですが、家族のいる姉は早めに相続したいということでしょう。姉の案に同調して、関係を保ちながら父親の相続を終えることをお勧めしました。
森さんには自分の財産は、まだきょうだいに知らせる時期ではないので、次の母親の財産について自宅や預金をどうするか、母親の意向を優先して話し合うようにお勧めしました。
相続実務士のアドバイス
●できる対策
父親の相続税の申告は円満に終わらせる。
次の母親の相続についても母親の意思確認をする。
●注意ポイント
きょうだいでも相続の場面でなければ、預金を知らせる必要はありません。きょうだいでも家計は別ながら、独身の場合は、姉が相続人にもなるため、意図など確認しておきましょう。
曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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