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債券市場に課題

イギリスのリズ・トラスが首相に就任したときに何が起きたかを覚えているでしょう。(中略)彼女は首相に就任し、政策のプランを持っていましたが、イングランド銀行は多くの間違いを犯したと思います。それは意図的だったかもしれません。金利は急上昇し、トラス政権は数日で崩壊しました。

 

もちろん、米国の政治システムは英国のそれとは異なります。しかし、債券市場が負のスパイラルに陥れば、それはトランプ氏にとって壊滅的な打撃となるでしょう。そして、それは私たちが就任したときに戦わなければならないことの1つです。」

 

J・D・バンス氏の憶測が正しいかどうかはわかりません。

ただ、新政権が決して勝利に浮かれたり、明るい未来を描くだけではなく、債券市場という課題を見出している点を我々は投資家として知っておくべきでしょう。

ベッセント氏の市場観を外挿すると…

前節のとおり、J・D・バンス氏は「最も重要な人事」として財務長官を挙げました。その財務長官に指名されたのがスコット・ベッセント氏です。彼はいまなにを考えているでしょうか。昨年2024年の1月に、ベッセント氏率いるファンドが投資家向けに書いたレターから考えてみます(→本レターで示されたベッセント氏の見解は、その後、彼自身を財務長官に押し上げる根拠のひとつになった可能性があります。以下は、筆者による抄訳であり、補足も含まれます)。

財務省とFRBの政策選択

「(前略)金融環境は過去3ヵ月間で大幅に緩和しており、この緩和的な環境は2024年も続く可能性が高いと考えています。なぜ、継続するのか。簡単に言えば、現下の緩和環境は、今年の選挙を前にイエレン財務長官とパウエルFRB議長が意識的に行った政策選択であり、市場はまだそのメッセージを完全には理解していないと我々は考えています。以下に、その理由を説明します。

米国財務省

まず、米国財務省から始めましょう。11月1日に行われた四半期定例入札見通しの公表(QRA; quarterly refunding announcement)は、市場に重要なシグナルを送ることを意図していたと考えています。

 

発表の日まで、債券市場はGDP比6%近い財政赤字によって生じた大量の国債発行を吸収するのに苦労し、長期ゾーンの金利はほぼ一直線に上昇していました。この発表に先立ち、(市場参加者で構成される)財務省借入諮問委員会(TBAC; Treasury Borrowing Advisory Committee)は長期債の発行をさらに増やすことを推奨しており、市場は予定されていた長期利付国債の発行が続くと予想していました。

 

しかし、意外なことに、11月1日、財務省は利付債の発行をわずかに増やすだけで、代わりに短期の財務省短期証券(Tビル)で赤字をより多く埋めると発表しました。 

 

なぜ、財務省はプランを変更したのでしょうか。財務省は、それまでの債券市場の下落とそれに伴う金融環境の引き締まりに不快感を覚えていたと我々は考えています。米国債のイールドカーブが大きな逆イールドであることを考えると、財務省短期証券(Tビル)による資金調達はより高コストになりますが、財務省はそれを支払う価値のある代償と判断しました。

 

短期的には、この発行戦略の変更は望ましい効果を発揮し、11月1日の発表以降、金融環境は大幅に緩和しました。しかし、中期的には、これはリスクの高い戦略であり、多大なコストを伴うと考えています。支払利息の増加に加えて、短期債の発行を集中させると、米国債は借り換えリスクを通じてより大きなボラティリティにさらされ、金融市場にアクシデントを起こす可能性が生じます。 」

 

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