(写真はイメージです/PIXTA)

非課税期間の無期限化、非課税投資限度額の大幅拡大で期待が高まる新NISA(少額投資非課税制度)。ネット上などでは「毎月定額つみたて投資するのと、1月に一括投資するのではどちらが有利か」で意見が割れているようだ。また、全世界株式(オールカントリー、略して“オルカン”※1)と米S&P500どちらを買うべきかも同様だ。本記事では、ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏が、“論争”に終止符を打つべく検証した。※1「オルカン」は三菱UFJアセットマネジメント株式会社の登録商標。

「1月一括投資」が有利だった

理屈は後回しにして、まずは検証結果から。図表1は2000年1月~2023年11月まで、年間投資額12万円を「1月に一括投資した場合」と「毎月1万円つみたて投資した場合」の23年11月末時点の資産額だ。投資対象はTOPIX、S&P500、MSCI-ACWI(オルカン)の配当込み指数とした。

 

 

結果は「S&P500に1月一括投資」が最も有利で、投資元本287万円が1,603万円に増えた(年平均利回り7.5%)。一方、「S&P500毎月投資」は1,476万円だった(同7.1%)。オルカン(MSCI-ACWI)、TOPIXも結果は同様で、「1月一括投資」のほうが有利な結果となった。

 

「ドルコスト平均法を実践するつみたて投資は一括投資よりも有利」という解説も少なくないが、検証結果は真逆だ。この理由は株価指数の推移にある。図表2のとおり、これら株価指数は検証した24年間の多くで右肩上がりだったため、1月に一括投資したほうがその後の株価上昇の恩恵がより大きくなったわけだ。

 

特に上昇率が大きかったS&P500とオルカンでは「毎月投資」と「1月一括投資」の違いが最終的な資産額により大きく影響した。TOPIXはアベノミクス以前のもたつきもあって24年間の上昇率が相対的に小さかったため、投資タイミングの違いによる差はあまりなかったが、それでも一括投資が有利だった。

 

8割以上の確率で「1月一括投資」が有利

先ほどの検証は「2000年に投資を始めた場合」に過ぎない。そこで2001年以降の各年についても検証しておこう。図表3は投資した年ごとに直近(23年11月末時点)の資産額を計算し、「1月一括投資のほうが資産額が多かった年数」を示している。

 

全24年間(2000年~2023年)のうちTOPIXは約8割、S&P500とオルカンは約9割で「1月一括投資」が「毎月投資」を上回った。この結果は、いつ投資を始めたとしても、長期的にはつみたて投資よりも一括投資が有利な可能性を示唆している。

 

 

逆に、「毎月投資」が有利だったのはどのような年だろうか。過去24年間のうち3指数すべてで「毎月投資」が有利だったのは2002年と2008年の2回だけだ。この2年間についてS&P500の推移をみると、ほぼ一貫して下落基調だった(図表4、他の2指数も概ね似たような推移)。

 

そのため「1月一括投資」は投資額の全てが株価下落の影響をフルに受けたのに対して、「毎月投資」では株価下落の影響が相対的に小さく済んだ。また、「毎月投資」のほうが平均購入単価が低く、その後の株価上昇による利益も多くなった。まさにドルコスト平均法が功を奏した形だ。

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年12月22日に公開したレポートを転載したものです。

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