外国人介護人材受け入れについてのよくある勘違い
実際に外国人介護人材を受け入れようとすると、現場からは不安の声が上がってくることが予想されます。実際に私の経営する施設でも、現場の日本人スタッフは受け入れに際して「不安だらけだった」と振り返ります。
外国人スタッフを受け入れる際によくある心配ごとは、利用者や同僚とコミュニケーションがとれるのか、日本の文化や習慣になじめるのか、受け入れることで逆に現場の負担が増すのではないかといったものです。私の施設では心配の声が上がり、日本人スタッフが勉強会を開いて職員同士で情報を共有して対策を考えていました。
一方、外国人スタッフに話を聞くと、「日本に来て困ったことはなかった」と話します。しかし、母国を離れて慣れない環境のなかで苦労がまったくなかったはずはありません。
私の施設は岩手県にあるため、一年中温暖なミャンマーから来た外国人スタッフたちにとって、東北の冬の寒さは初めて体験するものでした。
生まれて初めて本物の雪を見たと話してくれた人もいます。当初は防寒着の用意もしておらず、寒さや雪に慣れるまでには大変だったのではないかと思います。
また、日本語学校で習ってきた日本語と、施設の高齢者が話す方言の強い日本語とでは、語彙やイントネーションにおいて異なる点も多いため、コミュニケーションをとるうえでの苦労もあったはずです。
それでも、環境の違いにもすぐになじみ、言葉が完全には聞き取れなかったとしても元気で明るくニコニコして仕事に取り組む外国人スタッフたちは、利用者の方々からも愛され、現場の職員とも良好な人間関係を築いていきました。
私たちが心配していた「言葉の壁」というのは思っていたよりももろく、崩すことのできるものだったのです。外国人スタッフたちは言葉の壁の問題のみならず、日本の文化や習慣にもすぐになじんで、今ではチームの一員として欠かせない存在となり活躍しています。
これは私の施設に限ったことではないことが、介護労働安定センターの「介護労働実態調査」(2022年度)からもうかがえます。外国人介護人材をなんらかの形で受け入れている事業所と受け入れていない事業所とで、外国籍労働者の働きに対する評価を聞いたところ、両者の意識には大きなギャップがあることが明らかになりました。