外国人介護人材受け入れに立ちはだかる3つの壁
自分の施設の実情に合ったやり方で外国人介護人材を受け入れることは、人材不足の解消のための有効な一手であることに違いありません。
しかし、2024年の時点でも、外国人介護人材を受け入れたことがない施設がまだまだ多数派です。なぜ多くの施設で外国人介護人材の受け入れが進まないのかについては、次のような理由が考えられます。
受け入れに費用がかさむ
外国人介護人材を受け入れるには施設側の費用負担が大きくなります。どの制度を使うかにもよりますが、住居を含む生活環境にかかる費用や、入国管理事務、現地での面接にかかる費用など、日本人を雇い入れるよりも費用がかさむことが多いです。
私の施設で最初に技能実習生を受け入れた2017年には、事務長がミャンマーへ行って面接を行いました。最近ではオンラインでの面接にしたので、その分の費用を削減することができていますが、それでも日本人を採用するときには不要な入国管理事務は発生します。
また、採用サポートを行う団体へ依頼するのであれば、委託費用や紹介費用なども必要になります。
コミュニケーションへの不安
外国人スタッフの日本語の習熟度が不十分な場合、指導にあたる日本人スタッフをはじめ、同僚の負担が大きくなることが考えられます。日本語が理解できないために、申し送りの際に内容がうまく伝わらなければ、業務に支障が出てしまうことも心配されます。
介護の仕事では、日本語を話すだけでなく、日本語で記入する事務作業をしなければならない場面もあります。活用する制度によって、基準とされている日本語レベルが異なるため、一口に「外国人介護人材」といっても、人によって日本語の習熟度にはばらつきがあるのが実情です。
職場への定着率
受け入れのためにお金をかけ、指導に日本人スタッフの時間と労力を割いても、制度によっては受け入れ期間に限りがあります。
その後も在留資格を移行するなどして長く働いてもらうことができればよいのですが、せっかく受け入れて育てたとしても定着しないのでは無駄だと考えられてしまうことがあります。
確かに、外国人スタッフの受け入れにはお金も時間も労力もかかります。育成していくうえでも、文化の異なる国から来た外国人を仕事面でも生活面でもサポートしつつ、一人前の介護スタッフとして育てるのは決して簡単なことではありません。定着が難しいというのも確かです。
しかし、国内での人材確保が難しい以上、外国人介護人材の受け入れを進めていかなければ、やがて施設の運営が立ち行かなくなってしまうことも十分に考えられます。
人材を採用するのに費用がかかったり、定着率が低かったりするのは、日本人を雇用する場合でも同じです。
短期的な視点で見れば、費用や手間がかかることも多いかもしれませんが、まずは外国人を採用するということへの心理的な抵抗を取り除くことが、壁を越えていくための最初の一歩になります。