道端に立つ10代の女の子たち
モカさんは1回のパパ活で約2万円を稼ぐ。月で計算すると月収は平均60万円。大手企業の部長クラスに等しい金額を中学生が稼いでいることに、僕は驚きを隠せなかった。
最近では、パパ活をしたい女の子と経済的に余裕のある男性とのマッチングをサポートするアプリやサイトが多数存在している。こうしたサービスを活用するのがパパ活の主流となっているが、どのサービスも成人であることを証明する身分証の提示が必要だ。
中学生であるモカさんは身分証を持っているわけもなく、そもそも彼女は成人ですらない。この手のサービスを利用できない彼女は、もっぱらSNSと路上でパパを見つけているらしい。
これはモカさんに限ったことではなく、近年はTwitterやInstagramといったSNSを通してパパ活に勤しむケースは決して珍しくない。モカさんによれば、SNSを使って出会うパパの年齢は20〜30代、路上で声をかけてくる人は30〜50代が多いのだという。
彼女がパパ活について話す際、印象的だったことがある。それは、路上で出会うパパのことを「声をかけてくださる方」と表現していたことだ。「くださる」という敬語は、路上で未成年に対して声をかけて買春を行おうとする卑しい男、という目線では使わないはずだ。
敬語としては不適切だが、そこには、彼女なりの「お客様」に対するサービス精神が込められているのかもしれない。おそらく彼女は、僕を含む世間の大人が思っている以上にパパ活を〝仕事〞として捉えており、彼女なりの責任感やサービス精神でパパ活に取り組んでいるのかもしれない。
こうしたプロ意識について尋ねると、モカさんは「歌舞伎町で学んだこと」だと答えた。〝学び〞という言葉に引っかかりつつも、僕はさらに踏み込んだ質問をしてみる。
「路上でパパを探す際は、歌舞伎町で立ちんぼをしているんですか?」
中学生の女の子にはふさわしくない単語が並んだが、ここまで数時間以上モカさんの話を聴き続けて、衝撃のエピソードの連続に僕の感覚も徐々に麻痺してきていた。モカさんは後ろめたい様子もなく、当たり前のように淡々と答えた。
「はい。そういう子、結構多いですよ。ほら、あそこに立っている子とか」
そう言われて、モカさんが指差したゴジラビルの前に目をやる。ゴジラビルとドラッグストアの間の通りにはポツン、ポツンと数メートルおきに間隔を空ける形で、4、5人の女の子が立っていた。その中には通りがかった男性と立ち話を始める子もいる。
僕はモカさんに言われるまで、彼女たちがそこに立っていることを意識していなかった。というのも、歌舞伎町には昼から営業するキャバクラや風俗店も多く、昼間でも客引きの女の子たちが道端に立っている。歌舞伎町ではこうした光景は昼も夜も関係なく、ごく普通の日常なのだ。
だが、客引きだと思っていた女の子たちがパパ活をしているとは思いも寄らなかった。
「え? あの子たちはキャバクラやガールズバーの客引きじゃないんですか?」
「違いますよ。あれはみんなパパ活です」
青柳 貴哉
※本記事は『Z世代のネオホームレス 自らの意思で家に帰らない子どもたち』(KADOKAWA)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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