虐待の事実も「父親からの愛情」
「実の父親から性的虐待を受けていたんです」
モカさんの実父は、母親に性的虐待を、モカさんに対しては殴る蹴るなどの暴力を振るっていたという。そんな生活が続いたあと、両親は離婚。父親に引き取られたモカさんは、これまでの殴る蹴るの暴行に加えて、性的虐待も受けるようになった。
父親からの性的虐待という過去を、取材しながらある程度は想定していたので、モカさんの告白した内容を僕は静かに受け止めた。だが、僕にとって衝撃的だったのは、彼女が辛そうな様子をほぼ見せなかったことだ。
「普通ではないと思ってたけど、これがお父さんから私への本当の愛情なんだなと思った」
モカさんは、まるで父親と遊園地に行った記憶を思い出すかのように、軽やかな表情でそう語った。幼少期から殴る蹴るなどの虐待を受けて育った彼女にとって、唯一父親が〝優しく〞接してくれた時間だったのではないだろうか。だからこそ、客観的に見れば性的虐待でしかない出来事が、彼女にとって〝父親との楽しかった思い出〞に変換されている。
そんなふうに思考を巡らせると同時に、僕は心の底から違和感を覚えずにはいられなかった。父親からの性的虐待について話すモカさんの顔には、中学生らしいあどけない表情が浮かんでいたからだ。
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