起業の夢を抱いてトー横に通う少年
ユイト君はその当時、通信制の高校に通う17歳。アパレル関連の仕事に興味があり、将来は起業したいという夢を持っている。そのために自分自身を積極的に発信していきたい、と打ち明けてくれた。
僕はモカさんの時と同じように、動画を公開する際には仮名を付けた上で顔にはボカシを入れるつもりだった。だが、彼は自分自身のプロモーションに繋げるため、本名での出演を希望した。ユイト君は見た目こそ派手だが、年齢のわりに落ち着いていて、言葉遣いも丁寧だった。
「目立ちたいから」というような短絡的な考えで本名での出演を望んでいるわけではないことは、僕にもすぐに伝わってきた。「アットホームチャンネル」への出演が彼のプロモーションになるかは分からなかったが、僕は顔にボカシを入れる一方で本名での出演を受け入れることにした(ここで
インタビューの最中、僕にはどうしても確かめたいことがあった。それはトー横キッズと呼ばれる彼らの家庭環境についてだ。
モカさんへの取材では、複雑な家族関係やパパ活で収入を得ることなど、彼女が体験してきた壮絶な日々を聴いたが、他の子はどうなのか。
先ほども触れたように、ユイト君はモカさんのことを僕のチャンネルの動画ですでに知っていた。それ以上の面識はないと話すユイト君だったが、モカさんと自分の間に少なからず共通する部分も感じている様子だった。
ユイト君は、両親が離婚していること、母親と祖父母といっしょに暮らしていること、などを打ち明け、さらに自分の身に降りかかった虐待についてもこう語った。
「めちゃめちゃ殴られてましたね。母親とかおばあちゃんから殴られたり蹴られたり」
ユイト君もまた、モカさんと同様に母親と祖母から殴る蹴るの虐待を受けていた。
そうした家庭環境のため、自分と似た境遇の子が集まるトー横に足を運ぶようになり、自宅にはほぼ帰らなくなったという。自宅の場所を聞くとそこは都内有数の一等地だった。
彼にはモカさんと違う点ももちろんあった。中学生の頃は不登校だったユイト君は、現在は通信制高校の週3回の授業をちゃんと受けているという。配達のアルバイトをしており、月に10万円前後の収入も得ている。自宅には居づらさを感じているものの、帰れないわけではなく、シャワーを浴びたり荷物を取りに帰ったりすることもある。
ユイト君の話を聴くと、生活に困窮している様子は感じられなかった。帰ろうと思えば帰れる実家があるのも、完全に家を失ったホームレスとは大きく異なっている。
だが、安心して過ごせる家がない、帰りたいと思える家がない、という点では彼もまたホームレス状態、もしくはホームレスになるかならないかの瀬戸際を漂っていた。
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