「2年家に帰っていない」平均月収60万円の15歳
僕は、自分が何者であるかを説明した上で、モカさんに取材交渉を試みた。彼女は悩んだり考えたりする素振りは一切見せず、それまでと同じトーンで「いいですよー」と了承してくれた。
「もう2年くらい家には帰っていません。良く言えばホテル暮らし、悪く言えば家出少女」
取材を始めると、彼女はそう切り出した。僕は家出少女の〝少女〞の部分が気になった。雰囲気から彼女が若いことは察知していた。肩まであるミディアムヘアの毛先は赤く染められていて、その赤に合わせるかのように黒いパーカーには、紫やピンクという刺激的な配色のキャラクターが所狭しとプリントされていた。黒のスカートの丈は短い。
髪を後ろで束ねるリボンも黒、足元のスニーカーも黒い厚底、彼女の小さい顔の半分を覆うマスクも黒だ。いわゆる〝地雷系〞と呼ばれる出で立ちだった。僕は「かなり若いな。19歳、いや18歳くらいか?」と予想しながら「今、何歳ですか?」とあらためて年齢を確認すると、モカさんはまたもやはっきりと淀みなく、こう答えた。
「15歳です」
彼女は中学3年生だった。頭の中が真っ白になったあと、僕は大混乱に陥った。「え? 中学生ってYouTube に出ていいんだっけ?」「え? 中学生って撮影したら捕まるんだっけ?」などという素っ頓狂(すっとんきょう)な疑問が頭を駆け巡った。彼女の年齢を10代後半と予想していた僕の認識はグニャリと歪んだ。
モカさんの年齢を聞いて僕は分かりやすく動揺し、会話もしどろもどろになりかけていた。そんな僕にお構いなしの様子で、彼女はつらつらと自分の生い立ちを語り始めた。
モカさんが初めて歌舞伎町に来たのは小学4年生(10歳)の頃。両親はいるが二人とも本当の親ではないこと。その両親の虐待から逃げるように出た実家には、2年ほど帰っていないこと。血の繋がった本当の父親からは性的虐待を受けていたこと。現在はパパ活で生計を立てていること。平均して月60万円は稼いでいること。
そして、昔も今も、ずっと〝死にたい〞と思っていること―。
彼女の話は、そのすべてが驚きと衝撃の連続だった。15年という人生の中でモカさんの経験したことは、その倍以上生きている僕の理解をはるかに超えていた。
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