「今日からホームレスになりました」
2022年の秋、「アットホームチャンネル」のTwitterにこんなDMが届いた。
はじめまして。半年くらい前からYouTube観てました。いろいろあって今日からホームレスになりました。いきなりホームレスになったので何も分からないし不安があります。これからどうすれば良いか相談させていただいてもいいですか?
待ち合わせ当日、約束の場所だったJR浜松町駅の駅前で待っていたのはアヤリさん(仮名・当時22歳)という女性だった。僕は彼女を見て「とにかく若い」という第一印象を抱いた。本人から22歳という年齢を聞くまで「この子は10代かもしれない」と思ったほどだ。
上はグレーのパーカー、下は黒いスキニーパンツとスニーカーという出で立ちで、改札前の路上に彼女は立っていた。髪型は肩まで届かないくらいのショートヘアで、黒髪からは素朴な雰囲気が漂っている。背中にはキャラクターのようなものをあしらった黒いリュックを背負い、薄い紫色とピンクのキャリーケースを引いている。
オシャレに着飾っている印象はなかったが、かといって着の身着のままという感じもしない。髪を赤に染めていなかったし、黒ずくめの地雷系ファッションでもない。汚れたシャツを身につけているわけでもない。アヤリさんの風貌は、これまでに僕が出会ってきたZ世代のホームレスの人たちとは異なっていた。
僕が彼女から感じ取ったものを簡単に表すなら、“普通”というイメージだ。駅前に立っていた彼女は一見、一人旅をする学生のようにも見えた。
駅前の狭い路上で話を聞くわけにもいかず、僕はアヤリさんを連れて浜松町駅から歩き出し、東京港に面した遊歩道のある公園で彼女へのインタビューを始めた。
「これからホームレスになられるんですか?」
「そのつもりでいます」
そう答えたあと、彼女はホームレスになる道を選んだ理由について話し始めた。
「一応、まだ家(実家)はあるといえばあるんですけど、帰りたくないからホームレスになった方がマシかなっていう感じです」
アヤリさんの実家は離島にあり、まさに今日船で東京に出てきたばかりだという。待ち合わせをした浜松町駅は、東京港の旅客ターミナルの1つ、竹芝埠頭の最寄り駅でもある。彼女にカメラを向けている最中も、これから船旅に出るのか、それとも船を下りたばかりなのか、同じようなキャリーケースを引いた人々が僕たちの横をたまに通り過ぎていく。
僕はこの時、22歳の若者がホームレスになろうとしている、その瞬間に立ち会っていた。
杉原 杏璃 氏登壇!
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
(入場無料)今すぐ申し込む>>