22歳離島出身の女性「今日からホームレスになりました」…究極の選択の裏側にある「双子の姉」と「母親」の存在【Z世代ネオホームレスの実態】

22歳離島出身の女性「今日からホームレスになりました」…究極の選択の裏側にある「双子の姉」と「母親」の存在【Z世代ネオホームレスの実態】

「お金がない」「家がない」「頼れる人がいない」…そういった事情とは別の理由でホームレス状態になっている、いわば“ネオホームレス”とも呼べる存在の若者が増えているといいます。本記事では、元芸人でYouTube登録者数24万人超えの青柳貴哉氏の著書『Z世代のネオホームレス 自らの意思で家に帰らない子どもたち』(KADOKAWA/2023年4月発売)より一部抜粋し、著者が出会った22歳・離島出身の女性についてご紹介します。

「今日からホームレスになりました」

 
 

2022年の秋、「アットホームチャンネル」のTwitterにこんなDMが届いた。

 

はじめまして。半年くらい前からYouTube観てました。いろいろあって今日からホームレスになりました。いきなりホームレスになったので何も分からないし不安があります。これからどうすれば良いか相談させていただいてもいいですか?

 

待ち合わせ当日、約束の場所だったJR浜松町駅の駅前で待っていたのはアヤリさん(仮名・当時22歳)という女性だった。僕は彼女を見て「とにかく若い」という第一印象を抱いた。本人から22歳という年齢を聞くまで「この子は10代かもしれない」と思ったほどだ。

 

上はグレーのパーカー、下は黒いスキニーパンツとスニーカーという出で立ちで、改札前の路上に彼女は立っていた。髪型は肩まで届かないくらいのショートヘアで、黒髪からは素朴な雰囲気が漂っている。背中にはキャラクターのようなものをあしらった黒いリュックを背負い、薄い紫色とピンクのキャリーケースを引いている。

 

オシャレに着飾っている印象はなかったが、かといって着の身着のままという感じもしない。髪を赤に染めていなかったし、黒ずくめの地雷系ファッションでもない。汚れたシャツを身につけているわけでもない。アヤリさんの風貌は、これまでに僕が出会ってきたZ世代のホームレスの人たちとは異なっていた。

 

僕が彼女から感じ取ったものを簡単に表すなら、“普通”というイメージだ。駅前に立っていた彼女は一見、一人旅をする学生のようにも見えた。

 

駅前の狭い路上で話を聞くわけにもいかず、僕はアヤリさんを連れて浜松町駅から歩き出し、東京港に面した遊歩道のある公園で彼女へのインタビューを始めた。

 

「これからホームレスになられるんですか?」

 

「そのつもりでいます」

 

そう答えたあと、彼女はホームレスになる道を選んだ理由について話し始めた。

 

「一応、まだ家(実家)はあるといえばあるんですけど、帰りたくないからホームレスになった方がマシかなっていう感じです」

 

アヤリさんの実家は離島にあり、まさに今日船で東京に出てきたばかりだという。待ち合わせをした浜松町駅は、東京港の旅客ターミナルの1つ、竹芝埠頭の最寄り駅でもある。彼女にカメラを向けている最中も、これから船旅に出るのか、それとも船を下りたばかりなのか、同じようなキャリーケースを引いた人々が僕たちの横をたまに通り過ぎていく。

 

僕はこの時、22歳の若者がホームレスになろうとしている、その瞬間に立ち会っていた。

 

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※本連載は、青柳 貴哉氏の著書『Z世代のネオホームレス 自らの意思で家に帰らない子どもたち』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

Z世代のネオホームレス 自らの意思で家に帰らない子どもたち

Z世代のネオホームレス 自らの意思で家に帰らない子どもたち

青柳 貴哉

KADOKAWA

貧困だけでは語れない。元芸人が、Z世代ネオホームレスの実態に切り込む。 YouTubeでホームレスを取材し続ける、元芸人による渾身のノンフィクション。 自らの意思で家に帰らない、Z世代ネオホームレスのリアルに迫る。 …

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