BTFP残高は急速にゼロに。「Extend & Pretend」へ
米連邦準備制度理事会(FRB)は、2023年3月を中心とする市中銀行の資金繰り難に際し、苦境に陥った銀行向けに多額の融資を行いました。バンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)です。
同プログラムは、2025年3月10日に終了します。今年の3月11日が借り入れの最終申込日でした(→借り入れの最長期間は1年ですので、ギリギリで借り入れた銀行の返済日が2025年3月10日です)。BTFPは次節以降に補足するとおり、市中銀行にとって「生命維持装置」の役割を果たしています。
あれから2年経ち、銀行が「健康を取り戻して、独り立ち」できるようになったかといえば、まったくそうではありません。
なぜなら、①市場金利は上昇したままであり、銀行は引き続き、保有有価債券に巨額の含み損を抱えているためです(→後段の【図表1】を参照)。ほかにも、②オフィスを中心とする商業用不動産向け貸出の元利払いが滞っているため、銀行は、貸出金利の一部減免や返済期限の延長など、貸出条件の緩和を行っています。
この後者を、ニューヨーク連銀は「Extend and Pretend」と呼んでいます。銀行は、「問題を先延ばしにし、なにも問題がないかのようなフリをしている」ということです。それはいつものことでしょう。そして(結論を先走れば)、なんの問題もないようになるでしょう。
ちなみに、筆者が銀行の経営者であれば、同プログラムの期限である来年2025年の3月11日まで、借りられるだけの金額を借りていたと思います。
しかし、【図表1】に示すとおり、そうした直観とは対照的に、①満期を前に、そして、②(資金繰りがひっ迫する)「年末越え」を前に、同プログラムからの借入残高は急速に減少しています。
ということは、近いうちに銀行は再び、資金繰りに窮する可能性があります。当然ながら、FRBは同プログラムを延長するでしょう。
すなわち、中央銀行は自らすすんで市中銀行を「Extend and Pretend」に誘うでしょう。なぜなら、銀行による資産の投げ売りは、①融資・クレジット(→社債の信用スプレッドを含む)の場合には信用収縮であり、②債券(→純粋な国債の部分)の場合には金利上昇につながるためです。
メイン・シナリオは「FRBによる救済」(=同プログラムの延長)ですが、救済のタイミングによっては、金融市場に短期的な動揺が走るでしょう。