(※写真はイメージです/PIXTA)

東京商工リサーチの調査結果によると、上場企業が2024年1月から11月15日までの期間に実施した早期・希望退職の募集人員が、53社で計9,219人に達しました。これは、50社を超える規模の募集が3年ぶりとなるだけでなく、前年同期の約1.5倍に相当するペースであり、すでに2023年1年間の募集人数を上回っています。年末に向けての大型募集も相次いでいます。そのようななか、実際に早期退職をした人のあいだではその後の生活に明暗がわかれているようです。本記事では、高橋さん(仮名)の実体験をもとに、早期退職のリスクと後悔を防ぐ方法について、波多FP事務所の代表ファイナンシャルプランナーである波多勇気氏が具体的に解説します。※プライバシー保護の観点から、相談者の個人情報および相談内容を一部変更しています。

退職金「5,000万円」

「もうこれ以上働けない」

 

高橋和也さん(仮名/48歳)は、上場企業で部長職に就いていました。年収は1,000万円を超え、周囲からは「成功者」に見られていた彼ですが、仕事のストレスは限界に達していました。

 

「毎日のように取引先とのトラブルがあり、部下のフォローも欠かせない。他部署とは板挟み状態で、上司からの叱責も増える一方で、家に帰るといつもイライラして妻にあたってしまっていました」

 

そんなある日、会社から発表された「早期退職制度」。彼にとっては救いのように感じられました。提示された条件は割増退職金5,000万円――通常より大幅に増額された金額でした。

 

「もはやふたつ返事でした。5,000万円もあれば、しばらく仕事をせずに暮らせると思ったんです。年金は減るだろうけれど、これ以上ストレスを抱え続けるくらいなら、退職して新しい生活を始めたいと感じました」

 

高橋さんは、家族とも十分な話し合いをせずに退職を決断。しかし、それがどれほど大きな選択だったのか、彼はその時点で深く考えていなかったのです。実際には、迷っている暇もないほど精神的に追い込まれていたのかもしれません。

退職後に待ち受けていた厳しい現実

退職直後、高橋さんは晴れ晴れとした気分で、新しい生活に期待を膨らませていました。趣味のゴルフや旅行に時間を費やし、久しぶりに家族とゆっくり過ごす日々。

 

「しばらくは本当に幸せでしたね。これが自由な生活か、と思いました」

 

しかし、その幸せは長く続きませんでした。半年後、ふと通帳を確認した高橋さんは、退職金が予想以上のペースで減っていることに気づきました。

 

「子どもの学費や住宅ローン、日々の生活費に加えて、退職後は健康保険料や税金も重くのしかかってきました。5,000万円もあったはずなのに、このままでは数年で底をつくと思いました」

 

焦った高橋さんは再就職を考え始めますが、年齢とスキルの限界が大きな壁となります。希望する正社員の職には応募すらできず、面接に進んでも結果は不採用。非正規雇用やアルバイトで月収20万円程度の収入を得るのがやっとでした。

 

「この歳で新しい仕事を見つけるのがこんなに難しいとは思っていませんでした。退職する前に、もっと準備をしておくべきだったと後悔しています」

 

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※プライバシーのため、実際の事例内容を一部改変しています。

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