80代の母親が亡くなって、60代の姉と50代の弟の3人で相続手続きをすることになった和男さん(50代男性)。母親は生前に遺言書を作成し、その内容も子どもたち3人に話しており、3人とも合意がとれていたので、準備万端、何の問題もないと思っていました。ところがまさかの事態発生。姉弟3人で三等分するはずだった母の預金を、姉が母からもらったと一点張り…。姉弟の関係を悪化させたくない和男さんは一体どうすれば? 本記事では、和男さんが取るべき対応方法について、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。
税理士から「贈与」に引っかかるお金が多いという指摘を…
和男さんは、介護をする過程で母が現金を下ろすようにに指示していたのかも知れないと思い、何も言わなかったのですが、税理士から「贈与」に引っ掛かるかもしれないお金が多いと指摘を受けたのです。
母親の預金は同居する姉が管理していて、離れている和男さんと弟は任せてきたのですが、姉は前の貯金通帳は捨てたと言いますし、母から「お金を下ろして」と言われ、下ろした後は母親が何に使ったかは知らないと言います。
母親はお店をやめてからは病気が見つかり、この5年間位は入退院を繰り返していて、病院と介護施設を出たり入ったり。他にお金を使うことは考えられません。
贈与は相続財産になる
姉は母親の二つの預金口座から少しずつ引き出し、2,000万円あった口座はゼロになっています。この他にも満期になった定期預金1,000万円も自分のものにしています。
いずれも母親からもらったと姉はいうのですが、申告を担当する税理士から、相続財産として加算しないといけないと指摘されました。
本来ならば、預金は3分の1とする遺言書により3人で分けるべきところですが、姉は自分がもらったというばかり。和男さんと弟はお金が欲しいわけではなく、姉に本当のことを言ってもらいたいという気持ちですが……。和男さんは、どのように対処すればいいか迷っていると言います。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載相続のプロが解説!人生100年時代「生前対策」のアドバイス事例