母親が亡くなっておよそ8カ月後に税務署から「相続税申告のご案内」という封書が届いた久美子さん(50代女性)。以前父が亡くなったときと同様に税務署には何もしなくていいと思っていた久美子さんは驚いて、弟と二人で相談に来ました。早速財産評価をしてみると、基礎控除額ぎりぎり。税務署への申告の仕方に悩む久美子さん……。本記事では、税務署から送られてくる「相続税申告のご案内」の対応方法について、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。
母親が亡くなり、弟と相続手続きの相談に
昨年母親を亡くした久美子さん(50代女性)は、弟と二人で相続手続きをするべく相談に来られました。
久美子さんは独身で、ずっと両親と同居をしてきました。父親が78歳で亡くなってから母親が85歳で亡くなるまでの10年間、同居する久美子さんが面倒を看てきたと言います。
3つ下の弟は結婚を機に別世帯となり、現在は子ども2人にも恵まれて、自分で家を購入して生活をしています。
父親の財産は、母親に
父親が亡くなった際は、母親がまだ70代半ばだったので、父親の財産はすべて母親が相続したそうです。久美子さんも弟も仕事をしていますので、別に困らない状況でした。母親は専業主婦ですので、家や老後の資金は必要だという判断でもありました。
父親が亡くなった当時は相続税の基礎控除の改正前でしたので、5,000万円+相続人1人につき1,000万円が基礎控除額で、8,000万円の財産までは相続税はかかりませんでした。
父親の財産は、評価が3,000万円の自宅と預金2,000万円ですので、税務署には申告も、納税も不要でした。母親に財産を移すため、遺産分割協議書を作成して、不動産や預金の名義替えの手続きを済ませたのでした。
母親が亡くなってから8か月後に税務署から案内が届いた
母親が亡くなり、預金を確認すると400万円程。生命保険の死亡保険金は500万円ありましたが、非課税の範囲内です。
父親の相続のときは基礎控除以内で済んだことから、久美子さんは今回も相続税はかからず、相続税の申告も不要だと判断していました。
ところが、母親が亡くなって8カ月を過ぎたとき、税務署から「相続税申告のご案内」という封書が送られてきたのです。父親のときと同様に税務署には何もしなくていいと思っていた久美子さんは驚いて、弟と二人で相談に来られたというわけです。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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