父親が亡くなったというお知らせの電話
雅史さん(65歳)から電話がありました。電話の内容はこうでした。「父親が亡くなって、現在、葬儀の手配中。生前、父親とはあまり話ができていないが、(筆者の会社で)相続の準備をしたので、自分が亡くなったら連絡するようにいわれていたので、お知らせします」
雅史さんの父親(95歳)は亡くなったばかりで、これから通夜と告別式を執り行うため、葬儀会社と打ち合わせしている最中とのことです。
相続プランを作成 不動産は全部、評価していた
雅史さんの父親からは生前に相続の相談を受けていました。家系図を書いていただき相続人を確認した上、不動産、金融資産もお知らせいただいて、全財産を評価し、相続税の概算も出して説明しました。不動産の確認のためには、面積や評価が記載されている固定資産税通知を持参いただき、財産相談したいことや不安に思っていることなどを聞いておりました。
妻が亡くなって、配偶者の特例が使えない!
雅史さんの父親は東京まで2時間以上かかる地方都市にお住まいです。不動産が多く、賃貸事業もされているので、そもそも相続税がかかる認識ではあるものの、相談に来られた一番の理由は、前年、70代の妻が亡くなったということでした。
父親は、配偶者は半分無税、あるいは1億6,000万円まで無税という特例があることを知っていましたので、ぼんやりと妻がいれば相続税はそんなにかからないと思っていたところ、意に反して妻が先に亡くなってしまい、なんとかしなくてはと思ったといいます。
財産は2億円以上 不動産が多い、相続税もかかる
雅史さんの父親の財産は、不動産が26か所あり、賃貸アパートもあり、貸店舗や貸宅地があり、土地、建物で1億8,000万円、預金6,000万円、有価証券3,500万円、アパート建築の借入れが5,000万円、総資産は2億2,500万円と確認できました。
相続人は長男の雅史さんはじめ、妹2人、弟1人の4人。基礎控除は5,400万円、相続税は2,620万円となりました。
問題点のある不動産が多い
26か所の不動産の中には問題を抱えているものがあり、下記の指摘をしています。(番号は土地明細と符合)
①自宅:自宅・店舗 ・次男に相続させるには大きすぎる ・長女が相続しても次男が住んでいるため将来的に権利関係が複雑化する要因になる ・敷地面積400坪以上と広いが、間口が狭く、間口部分に店舗があるため、分割や活用が困難
④土地:行政に無償で貸している→固定資産税分だけマイナス収支
⑨長屋(賃貸住宅)・土地建物ともに所有物で長屋として賃貸 ・建物登記が存在しない、名寄帳にも載っていない→権利関係が不明瞭
⑩貸宅地:地型が悪く複雑な形状で、活用不可能・現地を確認しても正確な場所が不明 ・地代が安くマイナス収支
⑪土地:接道していないため活用不可能(再建築不可)・固定資産税分だけマイナス収支
⑫土地:草木が伸び放題で荒れている・固定資産税分だけマイナス収支 ・南側隣接地が土葬の墓地
⑬土地:正確な場所が不明・地積が狭く、地型が悪いため活用不可能 ・固定資産税分だけマイナス収支
⑭土地:接道がなく活用不可能(再建築不可)・固定資産税分だけマイナス収支
⑰貸宅地:現地確認の結果、廃屋になっている・借地人が亡くなっており、借地人が不明 →地代が滞りマイナス収支になる可能性、権利が複雑化する可能性
⑱土地:草木が伸び放題で荒れている・固定資産税分だけマイナス収支
㉙土地・公図が存在せず、行政も把握していない・固都税は免除のため収支はプラスマイナス
父親は提案により、課題のある不動産の問題解決をしながら、プラスにならない不動産については、処分していくことを決断され、地元の不動産会社に依頼をして少しずつ整理をしていくと話されていました。
