アジアには相続税がない国もありますが、日本と韓国の両国とも相続税が存在します。日本に居住している韓国籍の人々も多くいることから、日本において発生する国際相続では、トップクラスであるといっていいでしょう。本連載では、富裕層の国際相続の諸課題について解説します。
相続財産が日韓にある場合の相続税
韓国の相続税の課税関係について見ていきます。
韓国籍で日本に40年以上居住している被相続人Aさんには、日本居住者の子弟で相続人BさんとCさんがいます。BさんとCさんは、Aさんの日本にある財産だけを相続するつもりでしたが、Aさんの親戚からの通知で、Aさんが親から相続した不動産が韓国にあることを知らされました。遺産分割は、BさんとCさんがそれぞれ2分の1ずつです。この場合、相続税の申告に韓国の財産はどのように影響するのでしょうか。
韓国の独特の遺産課税方式
韓国の相続税は、独特の遺産課税方式を採用しています。
その方式は、遺産に課された相続税の総額を、遺産を取得した相続人等がその取得割合に応じて納税義務を負う形です。遺産課税方式を採用している米国の場合であれば、相続人数等にかかわらず、遺産の純額に課税しますが、韓国の場合は米国とも日本とも異なる独自の方式です。
その内容は、被相続人が住所あるいは常用の住居を1年を超えて韓国国内に有している場合、韓国の国内および国外の財産が課税となります。
国際課税研究所首席研究員 博士(会計学)。
中央大学大学院商学研究科修士課程修了。昭和50年東京国税局に勤務、平成2年退職。産能短期大学助教授、日本大学商学部助教授、教授を経て平成14年中央大学商学部教授(平成30年退職)。税務大学校講師、専修大学商学研究科非常勤講師、慶應義塾大学法学研究科非常勤講師、新潟産業大学経済学部非常勤講師、武蔵大学経済学部非常勤講師を歴任。
著書に『国際課税と租税条約』(ぎょうせい、第1回租税資料館賞受賞)、『租税条約の論点』(中央経済社、第26回日本公認会計士協会学術賞)、『移転価格税制の理論』(中央経済社) 、『詳解日米租税条約』(中央経済社)など。
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連載税務当局が監視する、超富裕層の国際相続をふかぼりする