(※写真はイメージです/PIXTA)

相続や事業承継をめぐる紛争は、資産や利害関係が複雑な富裕層ファミリーほど深刻化しやすい傾向があります。遺産分割や遺言の有効性、遺留分をめぐる紛争、さらには税務調査に伴う当局との争いは、資産承継や経営の安定を大きく揺るがしかねません。こうしたリスクを未然に防ぐことは、円滑な資産承継やファミリーガバナンスの確立に直結します。本稿では、富裕層ファミリーが直面しやすい紛争リスクと、その具体的な予防策について解説します。

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紛争予防の必要性

富裕層やファミリービジネスを営むファミリーにとって、紛争が生じた際の対応だけでなく、紛争リスクを事前に予防すること自体が重要です。紛争リスクの予防は、ファミリーが保有する資産を次世代に円滑かつ効率的に承継するエステートプランニングに役立つと同時に、ファミリーガバナンスの確立にもつながります。

 

ここでは、富裕層ファミリー内で生じやすい紛争を予防する具体的な方策について概観します。

遺産分割協議による紛争に備える

遺言がない場合、遺産は法定相続人が法定相続分に応じて共有することになります。しかし、この状態はあくまで一時的であり、各個別財産を確定的に帰属させるには、法定相続人全員による遺産分割協議が必要です。

 

遺産分割協議は全員の合意が前提であるため、一人でも反対するメンバーがいる場合は、調停や審判などの法的手続きが必要となります。特に富裕層ファミリーでは財産が複雑で、特別受益や寄与分の調整、資産評価も一筋縄ではいきません。ファミリービジネスを営んでいる場合、株式などが遺産に含まれると、なおさら利害調整は困難です。

 

「子どもたちはもめないから遺言は不要」と考える人も少なくありませんが、両親が他界した後には予期せぬトラブルが生じる可能性があります。法定相続人間での遺産分割協議を回避するため、遺言の作成は必須といえます。

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