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渉外案件に生じてしまう歪みの問題
国際相続案件など、複数国に関係する案件を扱っていると、各国の法制・税制の相違から生じる歪みの問題に遭遇する機会が多くあります。
外国信託についても同様です。信託に関する法令、特に課税ルールは日本と外国で異なるため、日本に関係する方、あるいは将来日本に関係する可能性のある方が外国信託を利用する場合、日本における法律上および税務上のリスクを事前に検討し、どのようにヘッジするかを慎重に検討することが極めて重要です。
このような信託は自分の自由意思で決めた法律行為です。自分の選択した法律行為である以上、そこから生じるリスクのヘッジも自己責任で行うしかない側面も大きいように思われます。
しかしながらグローバル化が広がり、国際結婚や希望して外国で就労する方も増えました。また外国で就労することが被用者として求められる環境にある方も多いと思われます。
そのように外国に居住・就労する者の義務として自由意思に基づかず関与した法律行為に基づき、ファミリーが想像もしなかったリスクに巻き込まれるケースがあります。そのリスクとは、外国の遺族年金に相続税が課税されるというリスクです。
本稿では、司法的な解決が十分でなく、立法的な対応が急務と考えられる深刻な問題として紹介します。
日本の遺族年金に関する税法上の規定と取扱い
遺族年金とは、被保険者が死亡した場合に、遺族の生活を保障するために支給される公的年金です。この遺族年金は、死亡した者が所有していた財産ではないので、相続財産にはなりませんが、生命保険や死亡保険金と同様にみなし相続財産となり相続税の対象とされることが相続税法には規定されています(相続税法3条1項6号)。
ただし、日本の遺族年金は、厚生年金保険法や国民年金保険法で相続税の課税対象外としています。所得税も同様です。
たとえば厚生年金保険法には41条2項に「租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない。」とし相続税・所得税を含めた課税を禁止し、所得税法では、「遺族の受ける恩給及び年金(死亡した者の勤務に基づいて支給されるものに限る)」でも非課税であることを明記しています(所得税法9条3項ロ)。国税庁も同様の考えです(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1605.htm)。
