税額の確定時期がズレる可能性も…被相続人、相続人の双方が日本居住者で、日韓双方に不動産があった時の相続税はどうなる?

税額の確定時期がズレる可能性も…被相続人、相続人の双方が日本居住者で、日韓双方に不動産があった時の相続税はどうなる?
(※写真はイメージです/PIXTA)

アジアには相続税がない国もありますが、日本と韓国の両国とも相続税が存在します。日本に居住している韓国籍の人々も多くいることから、日本において発生する国際相続では、トップクラスであるといっていいでしょう。本連載では、富裕層の国際相続の諸課題について解説します。

韓国の相続税は日本と違い賦課課税方式

申告期限は相続開始の日から6ヵ月で、遺言執行人または相続財産管理人の場合は選任後から起算します。なお、被相続人または相続人が外国に住所を有する場合は9ヵ月です。

 

申告は申告納税制度ではなく、上記の期限までに相続人のうちの一人が「相続税課税標準申告」を提出し、税務署長がこの申告に基づいて課税標準および税額を決定する賦課課税方式が採用されています。なお、税務署長における法定決定期限は申告後6ヵ月です。

 

◆相続財産

相続財産は、経済的価値のあるすべての物権と財産的価値のある権利の他に、次のものが含まれます。

①みなし相続財産として、保険金、信託財産および退職金等が含まれます。

②加算財産として、相続開始前10年以内に被相続人から相続人に贈与した財産の価額、および相続開始前5年以内に被相続人から相続人以外に贈与した財産の価額は、相続税の課税対象となります。

③推定財産に含まれるものは被相続人が相続開始前に自己の財産を処分し、または債務を負担した場合、所定の規定に該当するときは相続したものと推定して相続財産の課税価額に算入されます。

 

◆遺産税の計算方法

遺産税の計算は相続財産から公課金(租税、公共料金等)、葬儀費用、および債務を公課金等として控除して課税価額を計算します。そして課税価額から各種控除等を差し引いて課税標準を計算します。課税標準に税率を乗じて算出税額を計算し、各人に按分して、さらに割増税額の加算、税額控除を差し引いて納付税額が計算されます。

 

◆基礎控除額

相続税の基礎控除額は2億ウオン、配偶者の場合の標準額は5億ウオン、子弟の場合は3000万ウオンです。

 

贈与税の場合、配偶者の場合の控除額は6億ウオン、尊属または子孫の場合は5000万ウオン、その他の家族からの贈与は1000万ウオンです。

 

◆相続税と贈与税の税率

相続税と贈与税の税率は10%~50%です。

1億ウオン超5億ウオン以下:20%

5億ウオン超10億ウオン以下 :30%

10億ウオン超30億ウオン以下:40%

30億ウオン超:50%

韓国で納税し日本で外国税額控除の可能性も

日本側の課税関係では、当該相続人は居住無制限納税義務者となることから、日韓双方の相続財産が課税となります。韓国側の課税関係では、遺産課税方式のため被相続人が制限納税義務者となり、韓国所在の財産が課税となります。

 

問題は、被相続人および相続人が日本居住者であることから、韓国の税務当局に「相続税課税標準申告」を提出する期限の最長が9ヵ月、税務署長の決定期限が最長6ヵ月ということで、日本の相続税の申告期限に韓国の相続税額の数字が間に合わない恐れがあります。

 

日本の相続税の適用では、被相続人Aさんおよび子弟のBさんとCさんはいずれも日本に住んでいるということで、相続人であるBさんとCさんはいずれも居住無制限納税義務者です。

 

結果として、日韓双方にある財産全ては日本において課税となりますが、韓国所在の財産については韓国で納税が生じた場合、日本において外国税額控除という事態が生じます。日本の申告時に韓国の税額確定が間に合うのかが問題となりそうです。

 

矢内一好

国際課税研究所首席研究員

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