お寺の脱税事件
お寺で脱税が発覚したという事件は、過去にいくつかあり、特に金額が大きい事例がニュースとなっています。
・日蓮宗総本山が約3億3,000万円の所得隠し
・住職2人お布施を1億5,000万円も私的に流用
■日蓮宗総本山が約3億3,000万円の所得隠し
例えば日蓮宗の総本山である身延山久遠寺(山梨県身延町)にて、約3億3,000万円の所得隠しがありました。所得税の脱税額は約1億2,000万円となり、僧侶は甲府地検に告発されました。
お寺へのお布施は非課税ではあるものの、私的に流用していたため住職の所得とみなされました。これらのお金は、家族や自分名義の個人の銀行口座に送金するなどしていたそうです。
■お布施を「1億5,000万円」も私的に流用した住職
2つの宗教法人が、1億5,000万円を私的に流用して所得税の申告漏れが発覚したというニュースです。寺からの給与はあったものの、お布施などを貯蓄にあてていたそうです。
お寺の住職であっても給与はありますので、お金の流れはクリーンに管理しておかなければいけません。
■お寺の僧侶は脱税常習犯!?
お寺の僧侶は仏様に仕える立場の人であり、「脱税なんて絶対にしなそう」というのが世間のイメージです。しかし実際にはお寺の脱税は多く発覚しており、5年で追加課税が45億円を超えたというニュースがあります。
ニュースになるのは高額脱税の事件ですが、金額が大きくないお寺の脱税も複数あるようです。例えばお寺ではお布施を受け取りますが、領収書はほとんど発行しません。お金のやりとりの証拠が残りにくいので、脱税しやすい、誘惑が多い状況といえるでしょう。
■お寺で脱税が相次ぐ理由
お寺は脱税しやすい環境である他にも、お寺で脱税が相次ぐ理由があります。なぜお寺で脱税が多いのか、他の職業とは以下のような点が異なるからだと考えられます。
・宗教活動に税金はかからない
・納税の意識が乏しい
・住職の多くが経営者になっている
宗教活動に税金はかからない
宗教活動をしている宗教法人には、税金がかかりません。税金とは、法人の所得である利益に対して課税されるものだからです。
宗教活動は一般の法人とは違い、営利目的で行われているものではありません。そのため税法上、宗教法人の宗教活動には課税されないとされています。
しかしお寺は宗教活動だけでなく、宗教活動以外の収益事業を行っています。例えばお賽銭は寄付となりますが、結婚式などの収益活動で得た利益には税金がかかります。このような課税分と非課税分が混在しているため、きっちりと収益を管理していないと所得隠しと疑われてしまいます。
納税の意識が乏しい
お寺の事業の中には、宗教活動以外のものがあり、これらは税金がかかります。しかし一方でお布施や寄付、賽銭やお守りの販売は非収益事業とされ、非課税となります。
宗教法人で行う事業全てが非課税ではないので、適切な処理をしなくてはいけませんが、線引きが曖昧になってしまう部分があるのかもしれません。
お寺で脱税をしてしまう理由として、このような意識の低さが指摘されます。
住職の多くが経営者になっている
住職は、お寺の宗教法人から給料が支払われている場合があります。この場合は給料は源泉徴収をしなくてはならず、税金を納めているものです。
税務上は住職であっても、サラリーマンと変わらない給与形態であるとわかります。お寺から住職に支払われる給与は課税対象となりますので、申告せずに私的流用すると脱税となります。
しかし実際のところ住職は雇われているという感覚は低く、経営者のような状態となっています。お寺が得た収益は、住職の意のままというのが現実的なところといえるでしょう。