息子のおかげで家計は黒字も…息子夫婦の人生は激変
現在の父親の収支状況ですが、通販をやめたいま、支出は18万円と、平均額以上※ではあるものの、家計は黒字です。
※ 平均77.4歳の単身無職の世帯の月平均収入は12万6,905円。生活費などの消費支出14万円5,430円+税金などの非消費支出1万2,243円を合計して13万9,148円(総務省「家計調査報告(家計収支編)2023年平均値の概要」より)。
また、100万円を切っていた貯蓄額も、剛さんが返品を行ったことで280万円ほどに戻っています。今後大きな病気や介護の状態にならなければ、経済的には1人での生活が可能です。
今後、父親に介護が必要になった場合、剛さん夫婦が実家に戻り父親の面倒をみる必要が出てきます。「介護休暇制度」や「介護休業制度」を利用して、介護と仕事との両立ができる体制を整えていきたいところです。
実家で父親の介護をすることになれば、剛さん夫婦も実家に住み、片道1時間以上をかけ新幹線通勤をすることになるでしょう。あるいは、剛さんだけが実家に戻り、妻とは別居生活をするという選択も考えられます。
どちらにしても、剛家には負担がかかりますし、剛さん夫婦は共働きですので、日中はヘルパーなどを頼る必要があるでしょう。
ちなみに、筆者が剛さん夫婦の家計収支や退職金、65歳から受け取る年金収入を確認したところ、65歳からは夫婦で月30万円前後年金収入が見込めるほか、現在住んでいるマンションの住宅ローンは完済していることから、リフォームしたうえで売却や賃貸に出すといった選択肢もあります。したがって、経済的には、剛さん夫婦に破産の心配はありません。
しかし、現在54歳の剛さんは、今後役員になるのか、60歳で1度退職して再雇用してもらうか大切な時期です。
剛さんに聞くと、「いっそのこと、ここで会社を辞めて実家に帰っても、いままでに積み上げたキャリアがあるので、地元でも勤め先はすぐに見つかる自信があるのですが」と言います。
突如、人生が激変することとなった剛さんですが、「妻ともよく話し合い、今後のライフプランを決めていきたいと思います」といって、その日は帰られました。
剛さんは帰り道ふと、「息子には将来こんな思いをさせたくないな……いまのうちに話し合って、困らせないようにしよう」と決意を新たにしたのでした。
牧野 寿和
牧野FP事務所合同会社
代表社員
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