(※写真はイメージです/PIXTA)

熟年離婚や配偶者の死によって一人暮らしとなった高齢者は、急激な環境の変化が大きなストレスとなり、本人にさまざまな悪影響をおよぼすことが少なくありません。79歳の父親も、3年前に妻を亡くし、悲しみから「驚きの行動」に。父親の異変を感じとった長男が帰省すると、そこにはまさかの光景が広がっていたのでした……詳しくみていきましょう。

通販は原則「クーリング・オフ」の対象外

筆者は、まず電話で剛さんから一連の話を聞きました。剛さんは、「父親が購入したものを返品したいのですが、クーリング・オフは使えるでしょうか」と尋ねます。そこで筆者は、「クーリング・オフ」についてかいつまんで説明しました。

 

クーリング・オフとは、いったん契約の申し込みや締結した場合でも、契約を再考できるよう、一定期間であれば無条件で申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度です。

 

しかし、訪問販売や電話勧誘販売などはクーリング・オフ制度の対象となっている一方、通信販売は、対象にはあたりません。

 

通信販売で返品可能な条件については、販売事業者が定めています。たとえば、番組内で「返品可能」などと紹介されていても、「未開封・未通電に限る」など、販売事業者の定めたルール(特約)の範囲内であれば返品が可能です。

 

また、特約がない場合には、商品を受け取った日を含めて8日以内であれば返品することができますが、その場合、返品にかかる費用は消費者が負担するのが原則です。

 

父親が購入した商品は未開封のものも多くありましたが、すべて買ってから8日以上経過しており、返品は難しそうです。

 

剛さんはそれでも、「わかりました。なんとか返品できるよう、業者に相談してみます」と答えました。それから、「父親には認知症と買い物依存症の疑いがあるので、有給をとって病院に連れていきます」と話してくれました。

息子の交渉で破産回避も…明らかになった父親の「思惑」

それから約1ヵ月後、剛さんと筆者は、筆者の事務所で直接会う機会を設けました。先日の電話のあと、剛さんは早速、購入した業者に返品の交渉をしたそうです。

 

「粘り強く交渉したら、送料をこちらが負担すれば、返品に応じてくれる業者もあったんです。あとはフリマアプリで出品したり、リサイクルショップに出向いたりして、結局180万円ほどは取り戻すことができました」

 

また、心配していた父親の健康状態については、

 

「父親のかかりつけ医に診てもらったんですが、認知症の疑いはないそうです。だけど、年齢を考えるといつなってもおかしくないとのことで、外出の機会を増やすためにも、自治体の地域包括支援センターや社会福祉事務所などで実施されている認知症予防の催しに参加したらどうかと勧められました。父親も乗り気で、早速行ってみるそうです」

 

さらに剛さんは、実家をリフォームした業者にも会いに行ったそうです。

 

「いわゆる悪徳業者かと思って覚悟して行ったんですが、全然そうではなくて、社長が父親と知り合いだったみたいで。社長の話では、父親は『要介護5になっても自宅で住めるようにバリアフリー化してくれ』と注文したんだそうです。

 

バリアフリーだと結構お金かかっちゃうし、ちゃんと俺(息子)に相談したのかって聞いてくれたみたいなんですけど、『息子に迷惑かけないように、早くリフォームしてもらいたい』と言って、工事を急がせたそうです」

 

「たしかに、改めて実家を眺めると、設備としては十分なんです。でも相談してほしかったし、介護が必要になったら介護をする“人”が必要ですよね」と剛さんは苦笑い。

 

「親父に聞いてみたら、『今後認知症になっても、介護が必要な状態になっても、施設には入りたくない。母さんの位牌と仏壇のあるここで過ごしたいんだ』って言うんです。父親がリフォームしてでも生涯住みたいなら、その考えは尊重してあげたいんですが……そんなこと可能なんですかね?」

 

剛さんが尋ねた内容に、筆者は次のように回答しました。

 

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※プライバシー保護の観点から、登場人物の情報を一部変更しています。
【参照】
■独立行政法人国民生活センター「クーリング・オフってなに?」
(https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/coolingoff.html)

■厚生労働省「仕事と介護の両立支援制度」
(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/ryouritsu/kaigo/index.html)

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